第4章 再生可能エネルギー 4.4 再生可能エネルギーの特徴と課題

 ここまで再生可能エネルギーの種類とポテンシャル、力学的エネルギーから電気エネルギーへの変換の例として水力と風力発電について見てきました。今回は再生可能エネルギーの特徴について考え、その長所と短所について調べてみたいと思います。

再生可能エネルギーの特徴

 再生可能エネルギーの特徴を以下にまとめます。

  1. 量的に無尽蔵な自然エネルギーであり、枯渇するおそれがない
  2. 使用時に CO2 を排出しないので環境にやさしい
  3. エネルギーを国産できる
  4. エネルギー密度(W/m2 あるいは Wh/m2)が小さい
  5. エネルギー資源が偏在している
  6. 変動性再生可能エネルギー(VRE)では時間帯や季節、天候によって出力が変動する
  7. エネルギーコストが高い
  8. 風力、太陽光、地熱、水力発電等では初期投資はかかるが、運転時に燃料代相当費用がかからない、つまり限界費用がゼロである。

 最初の 1、2 はすでに説明済みです。特に、2 の特性のために、現在、再生可能エネルギーは注目を集めています。第 2 章で紹介したパリ協定では、「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成する」、すなわち、2050 年実質排出ゼロ(ネット・ゼロエミッション=カーボン・ニュートラル)を求めています。ここでネット=実質という言葉がゼロエミッションの前についていることに注意して下さい。温室効果ガスの排出を完全にゼロにしろとは言っていません。CO2 が吸収される分は排出してもよいと言っているのです。いずれにしても、大幅な削減が必要で、これに対応するには、原子力の大幅な拡大か、再生可能エネルギーを大幅に拡大させ、残る排出分については CO2 回収・貯留(CCS)するしかありません

 つぎに 3 のエネルギーの国産化ですが、4.1 で見たように、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、海洋エネルギーの導入ポテンシャルの合計は日本の総発電電力量をはるかに上回っています。現在、日本は石油、天然ガス、石炭といったエネルギー資源を海外に依存していますが、再生可能エネルギーであればエネルギーを純国産にできます。これはエネルギー安全保障上も非常に好ましいことです。

 ところが、再生可能エネルギーにはデメリットもあります。それが 4 ~ 7 です。

 まず、4 のエネルギー密度の問題です。表 4.3 は単位面積当たり産み出すことが出来る電気の出力をいろいろな資源で比較したものです。ここの We / m2 にはすでに設備利用率が掛かっていますので、設備容量ではなくて平均出力になっています。従って、これに 365 日 × 24 時間を掛ければ、1 年間の発電電力量(Wh/年)に変換されます。この表はさまざな文献に記載された結果をまとめたもので、左から中央値、平均値とその幅、文献数の順になっています。中央値で見ると、天然ガス、石油、石炭、原子力はすべて 3 桁の数字になっているのに対して、再生可能エネルギーは 1 桁もしくはそれ以下です。すなわち再生可能エネルギーは化石燃料に比べてエネルギー密度が大幅に小さいのです。天然ガス火力発電所と太陽電池を比べると、同じ出力を得るのに、値の大きな太陽電池でも天然ガス火力発電所の 73 倍の敷地面積が必要となります。火力発電所の様に集中して発電するのではなく、どうしても小規模分散型の発電形式となってしまうのです。

 もう一つの問題は、5 のエネルギーの偏在です。図 4.9 は電力供給エリア毎に太陽光と風力(陸上、洋上)の導入ポテンシャルを整理したものです。発電コストが 40 円 / kWh までの分を示してあります。このように再生可能エネルギーのうち大きな割合を示す風力発電の導入ポテンシャルの大きな地域が北海道と東北に偏っています。図の実線はその地区の電力需要を表していますが、これらの地域では需要が小さく、再生可能エネルギーが大幅に余ることが分かります。一方、その他の地区では導入ポテンシャルは電力需要まで届きません。このため、供給過剰となる北海道や東北の電力を他のエリアに送ること、つまり、電力の連系が必要なのですが、3.4 で紹介した北海道胆振地震時のブラックアウトの例のように、電力会社間の連系は十分に進んでいるとは言えません。

図4.9 再生可能エネルギーの地域別導入ポテンシャル(コスト40円/kWh以下)
上記出典より筆者作成

 6 の変動性再生可能エネルギー(VRE)の電力の変動は非常に大きな問題です。4.1に示した様に再生可能エネルギーには水力や地熱などの非変動性のものと、太陽光や風力などの変動性のものがあるのでした。導入ポテンシャルが大きな太陽光や風力はともに変動性です。図 4.10 に示す様に、太陽光は夜間は発電しませんし、日中も気象条件によって出力が変動します。そして、風力は文字通り風任せです。

図4.10 VREの変動
出典:九州電力ホームページ
http://www.kyuden.co.jp/trust_contents_detail_transparent_energy_2013.html

 ここで、VRE の変動には時間単位の動き(図の大きなうねり)ばかりでなく、分・秒単位の動き(例えば赤丸の部分の細かな変動)があります。

 3.4 で見たように、電力は生もので、需要と供給を同時同量でバランスさせる必要があります。出力が変動する再生可能エネルギーを加えて、どのように同時同量バランスを実現させていくのか、これは大きな問題です。時間単位の変動に加えて、分・秒単位の変動に対しても需要と供給を同時同量でバランスさせなければなりません。変動するものが少量のうちはまだなんとかなるのですが、VRE が大量に導入されるようになると至難の業となってきます。

 7 のエネルギーコストが高いですが、図 4.11 に示すように世界の太陽光や風力の発電コストは、ここ最近、大きく低下しています。LCOE は 100 米ドル / MWh(1 ドル = 100 円とすると 10 円 / kWh)を切り、オークション価格では 50 米ドル / MWh を切っています。すなわち、火力発電のコストに匹敵する、あるいは、それより安くなっているのです。このため、太陽光や風力の導入に拍車がかかっています。日本の場合はどうでしょうか? 太陽光の発電コストは大幅に低下しています。しかし、欧州の 2 倍とかなり高く、まだ100 米ドル / MWh に到達していないことが分かります。コストが高い理由としては、日照・風況など自然要因、平地が少ないという地理的要因、建設コストが高いことなどがあげられています。

図4.11 太陽光・風力の発電コスト(世界、日本)

 最後の 8 の限界費用ですが、再生可能エネルギーは火力発電や原子力発電とコスト構造がかなり違います。つまり再生可能エネルギーは自然エネルギーなので燃料費がいらないのです。これは再生可能エネルギーの大きなメリットとも言えます。限界費用とは、生産量を 1 単位増加させるためには、どれだけ費用が増加するのかを示すものです。多くの再生可能エネルギーは最初の設備投資をすれば、燃料費がかかりませんから、生産量を増大しても費用はゼロ、すなわち、限界費用がゼロとなります。したがって、太陽光や風力がコスト競争力をつけ、十分な供給力を持てば、安価な電力を供給でき、市場原理から優先的に使われるようになるのです。

再生可能エネルギー大量導入時の課題

 以上の再生可能エネルギーの特徴を踏まえて、どのようにすれば大量導入が可能となるのか考えてみましょう。

地域間連系の増強

 まず、再生エネルギーの偏在問題に対応して、エネルギーが過剰なエリアから他の需要があるエリアへエネルギーを送らなければなりません。電力の場合、ひとつの系統から別の系統にケーブルを通して送電する、すなわち地域間連系が必要です。欧州の場合には、メッシュ状に電力網が張りめぐらされていて、他の国やエリアと電気の融通が簡単にできるようになっています。これに対して、南北に細長く、海に囲まれた日本では、他国へ融通はできませんし、図 4.12 に示す様にエリアごとに需給バランスの管理が行われ、それぞれのエリア間で連系はされてはいるものの、連系線が細く能力が限られているのです。そこで地域間連系線の増強が必要となります。

図4.12 日本の系統構造と地域間連系強化

 地域を越えた電気のやりとりを増大させることは、出力変動を抑えることにもつながります。時間・天候・季節による変動は、連系の範囲を広域にするほど、吸収しやすくなります。図 4.13 を見て下さい。これはドイツの風力発電の出力変動の様子をグラフにしたものです。青い線が風力発電一機の場合です。時間変動、分・秒単位の変動どちらもとても大きいですね。オレンジが風力発電プラント全体のもの。風力発電機が集まることで変動がやや緩和してるのが分かります。赤がドイツ全体でまとめたもの。分・秒単位の変動は抑えられていますが、時間単位の変動はまだ残っています。ドイツの場合、風力発電機はおもに北部にあるので、気象条件が似ているため、時間単位の変動は解消されないのですね。より広範囲に連系させれば、この変動も小さくなることが予想されます。

図4.13 風力発電の変動(ドイツの例)
出典: IPCC再生可能エネルギー源と気候変動緩和に関する特別報告書(SRREN)(2011)

 広域連系はこの様に変動の抑制に効果的ですが、一方で停電が発生したときに広い範囲に影響が及ぶというリスクもあります。

需給バランスの変動と調整力

 太陽光・風力といった VRE の導入量が増えると、電力系統の需給バランスを維持するために必要な調整が増えます。3.4 の電力システムのところで示した様に、電力は需要と供給を常にバランスさせておく必要があります。バランスが変わると電力の周波数が変化してしまうのです。この電力供給区域における周波数制御、需給バランス調整その他の系統安定化業務に必要となる発電設備調整力といいます。

 時間スケールが異なる様々な変動があり、これに応じて調整力も図 4.14 の様に区別されています。

図4.14 調整力の例

 VRE が増える場合を考えてみましょう。まず、数分から時間単位の三次調整力から説明します。図 4.15 は電力需給のイメージを示しています。まず、発電のベースには原子力、水力発電などのベースロード電源があります。そしてこの図では太陽光発電がその上に乗っかりますが、時間・天候によって変動します。黒の太い線が電力需要です。電力需要に合うように火力発電(LNG・石炭・石油など)の量を変えて調整しています。火力発電が調整力となる訳です。日中、電気が需要以上に発電され余る場合が出てきます。この場合、まず火力発電の発電量を減らして調整します。また、揚水発電で動力を動かし水をダムに汲み上げます。電気を使用して電気の需要を増やします。揚水発電は電気を位置エネルギーに変えて蓄える調整力です。それでも電気が余る場合には地域間連系で、他のエリアに電気を融通します。最後に太陽光、風力発電などの VRE の出力を制御するという順番になっています。

図4.15 電力需給のイメージと調整力

 一方、需要は時間単位ばかりでなく、分単位、秒単位で変動していますので、これに対する調整も必要です。分単位の負荷変動の調整では、周波数変化を観測して負荷の変動を予測し対象発電所に出力指令を送る負荷周波数制御(LFC)などを行っています。また、秒単位の変動に対しては、まず回転発電機自体が持っている慣性力が働き、その後に系統周波数の変動に応じて発電機出力を変化させるような運転ができるガバナフリー発電機で調整されます。

 通常、発電機は同期発電機で、系統内で多数の発電機が同期していますので、同期発電機の定格容量の総和に応じて、負荷変動が平滑化されています。VRE の導入量が増えてくると、VRE は同期発電ではないため、系統内の同期発電機の数が減ることによって平滑化効果が薄れるとともに慣性力が低下し、周波数制御へ悪影響を及ぼすことが懸念されます。

 以上が現状での調整力の概要ですが、VRE の導入量が増えた場合には、どう調整するかが大きな問題となります。VRE の変動に見合うように、火力発電を使うのでは、CO2 の排出削減が進みません。調整力としては、カーボンフリーの電源を使う必要があるでしょう。カーボンフリーの調整力としては揚水発電が効果的なのですが、VRE が少量ならともかく、主電源化した場合には量が少なすぎて役に立ちません。

 これにはさきほど述べた広域で多数の VRE を接続して変動を打ち消し合わせる(日本の国土を考えると広域連系には限度がありますので、どこまで変動抑制が可能か検討する必要があります)ことや、VRE 併設蓄電池、系統蓄電池、化学エネルギー変換(水素)などが検討されています。慣性力低下についてはインバーターに疑似慣性を持たせる研究開発が行われているとのことです

(更新 2021/05/17)

タイトルとURLをコピーしました