第3章エネルギーの基礎 3.1 エネルギーの種類と保存則

 

 本章からいよいよエネルギーの話に入ります。第 3 章ではエネルギー全般ならびに既存の発電技術について、第 4 章では再生可能エネルギーについて、第 5 章では海洋エネルギー全般について検討していきます。まず、ここではエネルギーの種類エネルギー保存則について学びます。

エネルギーの定義

 私たちの周りには様々な「エネルギー」があり、私たちはそれらを使って生活しています。料理、照明、冷暖房、入浴、娯楽、仕事、通勤、旅行、レジャーなどなど、私たちが生きていくためにはエネルギーは欠かせません。では「エネルギー」とはいったい何でしょうか? 物理学では、「エネルギー」物体や系が仕事をする能力と説明されます。仕事(work)とは、力 × 移動距離です。つまり物体に力 \(F\) が働いて \( L\) だけ移動(変位)させたとき、力 \( F\) と変位 \( L\)の積 \(FL \)が、その力が物体になした仕事 \(W\)です。そして、この仕事を生み出すものをエネルギーと定義しているのです。

 例えば、質量 \(m\) の物体が高さ \(h\) まで持ち上げられているとします。重力加速度を \(g\) とすると、この物体に働く力は \(F= mg \)となります。手を放してその物体が距離 \(h\) 落下する場合を考えると、この時の変位は \(L=h\)となりますから、物体がなす仕事 \(W\)は \(mgh\) となります。仕事 \(mgh\)が行われたので、高さ \(h\) にある質量 \(m\) の物体にはもともと「仕事を生み出すもとになるもの」があったと考えます。つまり、物体は \(mgh\) の「エネルギー」を持っているとするのです。これが位置エネルギー(potential energy)です。

力学的エネルギーの保存

図3.1 位置エネルギーと運動エネルギー

 さて、図 3.1 の様に、静止状態にある質量 \(m\) の物体が距離 \(h\) 落下したとき、物体の速度が \(v\) であったとします。このとき、物体が行った仕事は先ほど説明したように、\(W=mgh\) です。これを変形してみましょう。いま、物体は距離 \(h\) 移動して、静止状態から速度が \(v\) の状態になったのですから、速度と移動距離の公式を用いて

$$v^2 – v_0^2 = 2gh$$

 となります。\(v_0\) は初期状態の速度ですが、物体は静止状態にあったためゼロですから、

$$v^2=2gh$$

$$gh=\frac{1}{2}v^2$$

 従って、仕事 \(W\) は以下の様に変形されます。

$$W=mgh=\frac{1}{2}mv^2$$

$$K=\frac{1}{2}mv^2$$

 この \(K\) が運動エネルギー(kinetic energy)です。このように、位置エネルギー \(P\) が仕事 \(W\) に変わり、さらに運動エネルギー \(K\) に変化したのです。運動エネルギーと位置エネルギーの和を力学的エネルギー(mechanical energy)と呼びますが、外力が働かない場合、力学的エネルギーは一定になります。これを力学的エネルギー保存の法則(law of the conservation of mechanical energy)といいます。

熱力学第1法則

「エネルギーの形態が変っても、その総量は変化しない」。これがエネルギー保存の法則(law of the conservation of energy)です。エネルギーの保存が成立するのは、力学的エネルギーの範囲内だけではありません。熱まで含めたエネルギー保存則が熱力学第 1 法則です。

図3.2 熱力学第1法則

 図 3.2 に示す様に、シリンダ内に封入された気体を加熱しますと気体は膨張し、ピストンが動かない場合には気体の圧力が上昇し、ピストンが動く場合にはピストンを動かす仕事をします。この場合、加える熱量を \(Q\) 、内部エネルギーの変化を \(\Delta{U}\)、ピストンがなす仕事を \(W\) とすると、次式が成立します。

$$Q= \Delta{U} + W$$

 加えた熱量 \(Q\) は内部エネルギーの増加 \(\Delta{U}\) と仕事 \(W\) の合計に等しい、すなわち熱エネルギーが内部エネルギーの増加と仕事に変換されたのです。

 では、この内部エネルギーとは何でしょうか? 内部エネルギーとは物質を構成する分子の運動エネルギーと位置エネルギーの総和です。気体の場合は大半が運動エネルギーなので、強引に運動エネルギーだけと仮定してしまったものが「理想気体」なのです。内部エネルギーの値は気体の温度・圧力が決まれば一義的に決まります。理想気体では内部エネルギーは下記のように表せます。

$$\Delta{U}=(3/2)nRT$$

\(n\) モル数、\(R\) 気体定数、\(T\) 絶対温度

 熱は仕事に変換されるので、「熱と仕事は本質的に同じエネルギーの1つの形態であり、仕事を熱に変換することも、逆に熱を仕事に変換することも可能である」ことになります。これが熱力学第1法則です。

エネルギーの種類と形態

 さて下記に示す様に、エネルギーには様々な形態があります。そして、様々な形態のエネルギーは図 3.3 に示すように相互に変換可能なのです。

  • 力学的エネルギー:物体の位置エネルギーや運動エネルギー。風力、水力、波力など
  • 熱エネルギー:燃料の燃焼熱、地熱、海洋熱
  • 核エネルギー:原子核の核分裂や核融合で発生するエネルギー。ウラン、プルトニウムなど
  • 光エネルギー:太陽からの輻射エネルギーなど
  • 化学エネルギー:物質の化学反応に関わるエネルギー(燃料電池などの化学反応)
  • 電気エネルギー:電荷・電流・電磁波などがもつエネルギーの総称。静電エネルギーや電磁エネルギー
図3.3  エネルギーの変換

 エネルギーには、1次エネルギー2次エネルギーという分類があります。石炭、石油、天然ガス、バイオマス、水力、地熱、風力、太陽光など自然界に存在し直接採取されるエネルギーを1次エネルギー、これに対して、電力、灯油、都市ガス、水素など、1次エネルギーから作られた、われわれが直接消費できるエネルギーを2次エネルギーといいます。

 また、1次エネルギーの中には、化石エネルギー(fossil energy)のような使えば減っていく枯渇性のエネルギーと水力、風力、地熱、太陽光などの枯渇しない再生可能エネルギー(renewable energy)があります。

エネルギーの単位

 最後に、仕事とエネルギーの単位をまとめておきます。

 仕事とエネルギーの単位は\(J\)(ジュール)です。仕事は力 × 移動距離ですから、単位の変換はつぎの様になります。

$$J= N\cdot m = \frac{kg\cdot m^2}{s^2}$$

 単位時間当たりの仕事仕事率(power)といいます。仕事率はや様々な機器の能力を示す指標として使われています。仕事率の単位は \(W\) (ワット)です。ワットの単位変換は次の様になります。

$$W= \frac{J}{s} =\frac{N\cdot m }{s}= \frac{kg\cdot m^2}{s^3}$$

 電気などの分野ではエネルギー量を表すのに \(kWh\) をよく使います。これは、仕事率が 1 \(kW\)の仕事を1時間続けたときのエネルギーで、つぎの様に変換できます。

$$kWh=kW \cdot 3600s \qquad [kJ] $$

 エネルギーの単位には他にも、kcal、BTU(英国熱量単位)、TOE(石油換算トン)などがあります。主なエネルギー単位の換算表を表 3.1 に示します。

 Jkgf·mkWhkcalBTUTOE
1 J10.1022.78E-072.39E-049.48E-042.39E-11
1 kgf·m9.8112.72E-062.34E-039.30E-032.35E-10
1  kWh3.60E+063.67E+051859.853413.818.60E-05
1 kcal4186.8426.941.16E-0313.971.00E-07
1 BTU1054.54107.532.93E-040.2512.52E-08
1 TOE4.18E+104.26E+091.16E+041.00E+073.97E+071

エネルギーとパワー(power)・設備容量(capacity)

 既に説明したように単位時間当たりの仕事仕事率(power)であり、これに時間を掛けたものがエネルギーです。例えば、発電所で考えると、発電機が生み出す power は出力とも訳されます。最も良好な特性を発揮しながら連続発生する出力を定格出力といいます。設備容量(capacity)[kW] という言葉もよく使います。これは設備の最大出力のことですので定格出力になります。年間発電量 [kWh/年] は設備容量に実際の年間の運転時間を掛けたもので、年間の運転時間は 365 日 ×24 時間 × 設備利用率 [%]となります。

 エネルギーの議論の時に、よくエネルギーとパワー・設備容量が混在していることがあります。kW、kWhどちらの話をしているのか十分注意して下さい。

(更新:2021/05/17)

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