第3章エネルギーの基礎 3.4 電力システムとエネルギーミックス

 前回、日本のエネルギー需給の姿について調べ、現状の 1 次エネルギーは化石エネルギーが中心で、再生可能エネルギーの比率は高くないこと、2 次エネルギーとしては電力と石油製品が主であることを知りました。2 次エネルギーの中でも、とくに電力は様々なエネルギーに変換が可能で、使用時には CO2を排出しない、安全で利便性が高く、かつクリーンなエネルギーです。海洋エネルギーを含む再生可能エネルギーもすべて電力に変換されて使用されています。そこで、これからしばらくテーマを電力に絞って、電力システムと発電(方式、効率、コスト、CO2 排出係数など)について検討していくことにしましょう。なお、再生可能エネルギーは第 4 章で扱いますので、本章では電力システム全般と現在のシステムの中心である化石燃料発電について述べたいと思います。ここではまず電力システムと日本の電源構成について学びます。

電力システム

 電気を生産者から消費者まで届けるための、発電送電変電配電すべてを含む電力システム全体を電力系統(electrical grid, electric grid, power grid)と呼びます。電力はきわめて利便性が高いと述べましたが、この電力システムが整備されているからこそ、私たちは電力の利便性を享受できるのです。

 図 3.10 に電力系統の概念を示します。火力発電所、原子力発電所、水力発電所などの発電設備で作られた電気は交流で、電圧が 2 万 3 千ボルトや 1 万 2 千ボルトですが、電気抵抗による損失を減らすため、50 万ボルトから 27 万 5 千ボルトの高電圧に変電変電所に送電されます。変電所には超高圧変電所、一次変電所、中間変電所、配電用変電所があり、この順に徐々に電圧を下げていきます。発電所から変電所まで電気を送る仕組みが送電で、変電した電気を各需要家に配る仕組みが配電です。日本国中いたるところに電線が張り巡らされ、電力網が作られています。そのおかげで私たちは、日本のどこででも電気を使うことができるのです。

図3.10 電力系統の概要
出典:電気事業連合会ホームページ
https://www.fepc.or.jp/enterprise/souden/keiro/index.html

 日本では 10 の電気事業者がそれぞれに系統をもち、周波数と電圧を一定範囲内に維持するようにコントロール(運用)しています。電力は「生もの」であると前に書きましたが、消費される分だけ発電しているのです。需要と供給のバランスが崩れてしまうと、系統内の周波数に影響が出てきます

図3.11 電力の需給バランス (資源エネルギー庁資料を基に筆者追記)

 図 3.11 にその状況を模式的に示しています。供給(発電)が需要を上回る場合には発電機の回転数が上昇して周波数が上昇、逆に供給(発電)が需要に追いつかない場合には回転数が下がって周波数が下がります。周波数が変動すると電動機の回転速度が変動するなどの問題がでますので、周波数を一定にするように制御しています。一定以上の周波数変動があると、発電機が自らの機器保護等のために自動的に系統から切り離される(解列)ようになっています。これが連鎖的に起こると、最終的に全発電機が停止してブラックアウト(全域停電)に至ります。2018 年 9 月、北海道胆振東部地震の後、苫東厚真火力発電所が停止し、さらに、水力発電所や風力発電所も大量に停止して、需要に対して供給が減って周波数が下がったことから、日本で初めてのブラックアウトが起きてしまいました。

 さて、日本における基幹送電網を図 3.12 に示します。北海道、東北、及び関東の周波数は 50 Hz、中部・北陸より西側は 60 Hz となっています。北海道と本州、四国と本州の間は海底ケーブルで、直流でつながっています。周波数の異なる東と西のエリアについては周波数変換所で、いったん直流にした後、再度交流に戻しています。このようにして、北海道から九州までの電力系統は、すべて送電線でつながっているのです。

図3.12 日本の送電網
出典:電気事業連合会ホームページ
https://www.fepc.or.jp/enterprise/supply/soudensen/index.html

日負荷曲線とエネルギーの分担

 電力需要は季節変動がありますし、1 日のうちにも変化します。図 3.13 に 1 日の電力負荷量の推移を示します。電力需要は 9 時頃から上昇し始め 15 時頃にピークに達し、17 時ころから減少し始めます。こういった電力需要の増減に合わせて発電する電気の量を同時同量でバランスさせています。

図3.13 日負荷曲線とエネルギーの分担

 電気を供給する源を電源と呼びます。火力発電所、原子力発電所、太陽光、風力など様々な電源で電力が作られていますが、電源の種類によって性格が異なりますので、それを考慮しながら電源を組み合わせて発電しているのです。

 ポイントになるのは発電コスト運転のフレキシビリティです。石炭火力や原子力などは安価ですが、いったん起動させると止めることが難しいので、一定量、常に動かしておきます。この様な電源をベースロード電源と呼びます。天然ガス火力はベースロード電源よりコストは高いものの、運転のフレキシビリティがあるので、需要の変化に合わせて使います。これがミドル電源です。さらに、それでも電力の供給が追いつかない時のために、石油火力や揚水式水力発電などの備えの電源を用意しておきます。これがピーク電源です。このように性格の異なる電源を組み合わせて、全体的に低コストで電力需要に対応できるように発電されているのです。

日本のエネルギーミックス(電源構成)

 電力を作るために組み合わせる電源の割合を電源構成エネルギーミックスともいう)といいます。図 3.14 にこの電源別の発電電力量の推移を示します。2011 年の東関東大震災以降、ベースロード電源であった原子力の割合が大幅に低下し、その分をベースロード電源の石炭火力とミドル電源の LNG 火力で埋めているという構図になっています。再生可能エネルギー(水力+新エネ)は増加していますが、2017 年度はまだ 16 %にすぎません。火力発電比率の増加によって、今度は CO2 排出量の増加問題が持ち上がります。

図3.14 電源別発電電力量の推移
経済産業省 エネルギー白書2019

将来のエネルギーミックス(第5次エネルギー基本計画)

 さて、第 2 章で述べた様にパリ協定の国別削減目標長期目標の達成に向けて動かなければなりません。このために、2018 年 7 月に第 5 次エネルギー基本計画が策定されました。国が定めるエネルギーの基本方針を示したものが「エネルギー基本計画」で 3 年ごとに見直されます。「第 5 次エネルギー基本計画」には 2030 年のエネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組の更なる強化を行うとともに、新たなエネルギー選択として 2050 年のエネルギー転換・脱炭素化に向けた挑戦が掲げられています。特に、この基本計画の大きな特徴は、再生可能エネルギーについて、前回の基本計画が「これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を目指し」となっていたのに対し、「2030 年のエネルギーミックスにおける電源構成比率の実現とともに、確実な主力電源化への布石としての取組を早期に進める。」としたことです。

 では、2030 年のエネルギーミックスとはどんなものなのか? これを図 3.15 に示します。ポイントは、再生可能エネルギー比率を 22 ~ 24 %に増大させる、原子力を 20 ~ 22 %にまで復活させるなどのゼロエミッション電源の増大(42~46%)にあります。再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みとしては、(1)急速なコストダウンが見込まれる太陽光・風力の主力電源化に向けた取組、(2)地域との共生を図りつつ緩やかに自立化に向かう地熱・水力・バイオマスの主力電源化に向けた取組が記載されています。再生可能エネルギーの主力電源化にはさまざまな課題があります。これについては第 4 章で扱います。さらに、本講座と関連するものとして、国内の海洋等におけるエネルギー・鉱物資源の開発の促進があげられています。これについては、第 5 章、11 章、12 章で述べたいと思います。

図3.15 日本の電源構成と2030年度のあるべき姿
資源エネルギー庁「日本のエネルギー2019」

 この計画では 2030 年に原子力を 20 ~ 22 %にまで復活させることになっていますが、なかなか難しい状況にあります。原子力が復活しない場合には再生可能エネルギーをさらに積み増ししなければならなくなります。

 2050 年に向けてでは、エネルギー転換を図り、脱炭素化への挑戦を進めていくこととされており、再生可能エネルギーの経済的自立・主力電源化クリーンなガス利用へのシフト非効率な石炭火力発電のフェードアウトCCS(13 章で詳述)や水素転換などの長期を展望した脱炭素化への挑戦などがあげられています。なお、ここでいうクリーンなガス利用とは主に水素利用のことです。

 なお、2020 年に入って安倍内閣から菅内閣になるや、「2050 年にカーボン・ニュートラルにする」と、日本も表明する様になりました。第 6 次エネルギー基本計画の策定が 2021 年に予定されていますので、わが国のエネルギーミックスもこの「2050 年カーボン・ニュートラル」の線で見直されるものと思われます。なお、「カーボン・ニュートラル」についてはコラム 3.1 に詳しく述べます。

 また、資源エネルギー庁が「2020ー日本が抱えている問題」という記事を公表しています。いろいろな問題がわかりやすく解説されていますので、ぜひ参考にして下さい。

2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)
我々の生活に必要不可欠なエネルギー。最新のデータをみながら現在の日本のエネルギー事情をご紹介します。
2020—日本が抱えているエネルギー問題(後編)
前編に続き後編では、脱炭素社会実現のための省エネ・イノベーション、再エネ導入拡大の取り組みなどをご紹介します。

(更新 2021/02/20)

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