第7章波力発電 7.4 波力発電技術

 波力発電にはいろいろな方式があります。流れの中にプロペラを置けば単純にエネルギーを取り出せる風力・水力・潮流・海流発電とは違って、波からエネルギーを取り出すのはそれほど簡単ではなく、いろいろな方法が考案されていますが、これがベストというところまでは至っていません。今回はさまざまな波力発電技術を比較してみましょう。

水粒子の運動

 波力発電の方式について説明する前に、水粒子がどういう運動をしているか説明しておきます。水面は上下運動を繰り返していますが、その下で水粒子は円運動をしています。図 7-7 は波が左から右に進行している時の水粒子の軌跡を表しています。水深が大きな「深水域」では円運動をしており、「浅水域」では海底の影響を受けて楕円運動をしています

図7-7 水粒子の運動
(出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wave_motion-i18n-mod-with-ground.svg)

波力発電の方式

 さて、いよいよ波力発電の方式ですが、大きく分けて振動水柱型可動物体型越波型の 3 つに分類されます。図 7-8 に主な波力発電の方式を示しました。なお、図の TRL は、Technology Readiness Level の略で技術成熟度を表し、数値が大きくなるほど成熟度が大きくなります。1~2 が基礎研究、3~5 が応用研究・開発、6~7 が実証、8~9 が事業化レベルです。

図7-8 波力発電の方式 
(出典:IRENA (2020), Innovation outlook: Ocean energy technologies, International Renewable
Energy Agency, Abu Dhabi.に筆者追記)

振動水柱型 (oscillating water column)

 下面のみを開放した円筒(空気室)を海面に差し入れると、空気室内の海面は特定の周期の波の中では共振を起こして大きく上下します。この水柱振動現象を利用して波のエネルギーを取り出す方法が振動水柱型です。図 7-9 は沿岸に固定する振動水柱型の例で、スコットランドのアイラ島で 500 kW の世界初の産業用発電を行っている英国 Wavegen 社の LIMPET です。空気室の海面上昇②に伴って圧縮された空気がタービン③を回転させて発電します。

図7-9 沿岸固定式振動水柱型波力発電装置の例

 沿岸固定式は給電を行う電気設備に対して発電装置が近接しているため、アクセスやメンテナンスも含めた運用が容易であるという利点がありますが、いっぽうで陸地を占有することから設備の設置に対して制約が発生する、海岸域の環境破壊が生じる、浅瀬域では波のエネルギーが減少されているので出力が小さいなどの欠点があります。そこで、次に振動水柱型の浮体式が開発されました。

 図 7-10 は わが国の海洋科学技術センター(現在の海洋研究開発機構)が開発した「海明」です。波の進行方向に 4 つの空気室を並べるアッテネータ方式を採用しています。 浮体は長さ 80 m、幅 12 m、高さ 5 ~ 7 m あり、1978 年から 125 kW の発電機 3 台を搭載して第 1 次試験が行われ、続いて 1979 年から第 2 次試験(発電機 8 台)、1985 年から第 3 次試験が行われました。 波高 2 m のときに平均 24 kW、5 m で 240kWの出力を確認しています。 この性能から計算された発電単価は 360 円 / kWh 。 波による本体の上下動が大きいため、搭載された発電装置に対する波面の上下運動が相対的に小さくなり、1 次変換効率が最大 10 % と低いのが欠点でした。

図7-10 浮体式振動水柱型波力発電装置『海明」(海洋科学技術センター 1981)図は 益田善雄、宮崎武晃、1979
出典:国交省「海洋開発工学概論  海洋再生可能エネルギー開発編」(2018)

 そこで開発されたのが、波の進行方向と直角に 3 つの空気室を並べたターミネーター方式の「マイティホエール」です(図 7-11)。写真のプロトタイプモデルは長さ 50m、幅 30mあり、 荒天時(波高が非常に高く、タービン・発電機が危険回転数に達した場合)には、タービンは、空気入力を安全弁により自動的に遮断し、タービン・発電機は、停止するシステム になっています。1998 年 5 月に建造され、同年 7 月から 2002 年 3 月まで三重県度会郡南勢町(現、南伊勢町)の五ヶ所湾沖合で実海域実験を行い、最大で 35 %の一次変換効率を得ています。

図7-11  浮体式振動水柱型波力発電装置「マイティホエール」(海洋科学技術センター)写真 日本財団図書館ウェブサイト 図は 鷲尾幸久 2001
出典:国交省「海洋開発工学概論  海洋再生可能エネルギー開発編」(2018)

越波型(overtopping devices)

 越波型とは、越波による海水を貯水池あるいは貯水槽等で一時的に貯留し、貯水面と海面との高低差を利用し、排水路にタービンおよび発電機を設置して発電する方式です。 図 7-12 に示すデンマークのウエーブドラゴンは、片側を越波を考慮した断面形状①とした浮体本体②、その両側に設置した大きな波の反射板③、そしてこれらを係留する装置から構成されていて、浮体上部に貯留した海水を排水する際に発電するための低圧タービンと発電機が、排水路④に複数設置されています。

図7-12 ウェーブドラゴン(ウエーブドラゴン社ウェブサイト)
出典:国交省「海洋開発工学概論  海洋再生可能エネルギー開発編」(2018)

可動物体型(oscillating bodies converters)

 波の上下運動や水粒子の回転運動によって物体を動かしエネルギーを取り出す方式で図 7-8 のようにいろいろな方式が考えられている。

ラフト式

 多数の浮体を連結した多重ラフトで、波の振動に合わせた各浮体の位相差によって継手部に生じるトルクをもとにエネルギーを取り出す方式で、継手部に油圧ポンプを取り付けて、この油圧によってタービンを回転させて発電します。英国の PelamisⅡ(図 7-13)は全長 180 m、直径 4 m、重量約 1350 トンで 5 個の円筒形の浮体を 4 つの関節で縦に連結しています。波による関節の角度の変化を油圧に変換し、油圧モータで発電します。発電能力は 1 基当たり約 0.75 MW 。波の向きに対する指向性が強く、浮体の長さが長くなる傾向にあります。

図7-13 PelamisⅡ(Pelamis Wave Power 資料)
出典:NEDO 再生可能エネルギー技術白書第2版

ポイントアブソーバー式

 浮体の波による上下運動を利用するタイプです。波に対する指向性がないので、波向き影響の点から優位です。 構造がシンプルで発電装置も含め大部分が水中に没しているので、浮体本体の構造安全性や信頼性の点からも有利となります。 下部の構造強度や発電装置への上部からの浸水に対して注意を払った構造様式とすることが必要です。代表例は米国 Ocean Power Technologies 社 のパワーブイ(図 7-14)です。

図7-14 パワーブイ (Ocean Power Technologies 社ウェブサイトの図を一部改変)
出典:国交省「海洋開発工学概論  海洋再生可能エネルギー開発編」(2018)

波力発電の効率

 波力発電の効率をまとめているものがないか探したところ、下記資料を見つけました。方式ごとの効率はつぎの通りです。効率が大きいほど波を受ける長さが短くてすむことになり、装置にもよりますが経済性が増すことになります。

  • 振動水柱型 15-40% (波を受ける幅 B∼ 30 m)
  • 越波型 4-23% (波を受ける幅 B∼ 300 m)
  • ポイントアブソーバー式 3-42% (波を受ける幅 B∼ 5-20 m 小さな装置ほど効率が低くなる)
  • フラップ式 41-65% (波を受ける幅 B∼ 20 m)
  • ラフト式 5-7% (波を受ける幅 B∼ 150 m)

参考:http://www.coastalwiki.org/wiki/Wave_energy_converters#Appendix_B:_Efficiency_of_wave_energy_conversion_methods

各波力発電技術の導入状況

 どのくらい設置されている、あるいは設置が計画されているかを方式別にまとめたのが図 7-15 です。左側は導入済みのもので振動水柱型が多いです。一方、右側は今後予定されているもので、振動水柱型はわずかで、可動物体型、なかでもポイントアブソーバー式が多くなります。導入済みの設備容量が 1.545 MW で導入予定の設備量が 100.92 MW なので 70 倍くらい違います。可動物体型は構造が簡単でコストが安いのが理由だと思われます。導入状況の詳細については次項でみていきます。

図7-15 導入済み及び今後予定されている波力発電装置方式 
(出典:IRENA INNOVATION OUTLOOK OCEAN ENERGY TECHNOLOGIES 2020 に筆者追記)

(更新 2021/12/20)

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