第4章 再生可能エネルギー 4.1 再生可能エネルギーの種類とポテンシャル

 この講座の主要テーマである「海洋エネルギー」は再生可能エネルギーに分類されています。再生可能エネルギーは「枯渇しないエネルギー」であると説明しました。本章ではもう少し詳しく再生可能エネルギーについて調べていこうと思います。本章では、まず再生可能エネルギーの種類とポテンシャルについて述べた後、海洋エネルギーに関係の深い水力風力を取り上げて、力学的エネルギーから電気エネルギーへの変換について学びます。最後に再生可能エネルギー特有の問題点と大量導入に向けての課題について考えようと思います。

 では、まず再生可能エネルギーの種類と世界全体及び日本のポテンシャルから検討していきましょう。

再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーについては 3.1 で紹介しました。再生可能エネルギーは太陽光、風力、水力、海流、波力、海洋温度差、地熱、バイオマスといった自然エネルギーで、発電時には二酸化炭素を発生させないという利点を持ちます(3.6)。そのエネルギーの源は主に太陽の放射、惑星間引力、マグマですが、中心となるのは太陽エネルギーでしょう。

 図 4.1 に太陽エネルギーの流れと再生可能エネルギーとの関係を示しました。第 1 章で示した様に、太陽では莫大なエネルギーが生み出され、四方八方に 1.37 kW/m2 のエネルギーが放射されています。地球が受けるのはその断面積分の 1.74×1017 Wで、年間で 5.5×106 EJ (エクサジュール、1018 J )ですが、このうちの約 30 % は反射されてしまうので、私たちが利用可能な太陽放射はおよそ 1 kW/m2年間で3.9×106 EJ です。このエネルギーが大地や海洋を加熱し、風を起こし、海洋を動かし、バイオマスを育てているのです。太陽エネルギーは人類が 1 年間に消費するエネルギー(567 EJ)の 1 万倍にも相当しますが、図 4.1に示すように風、海洋エネルギー、バイオマスとして取り出せるのはそのごくわずかにすぎません。それでも人類のエネルギー消費を全部まかなうほどのポテンシャルを持っています。

図4.1 太陽エネルギーの流れと再生可能エネルギー

再生可能エネルギーのポテンシャル(世界全体)

 ポテンシャルとはなんでしょうか? ポテンシャルとは潜在的な資源量の事です。表 4.1 に世界全体の再生可能エネルギーの理論ポテンシャル(theoretical potential)技術ポテンシャル(technical potential)、さらに現状の利用量を示します。

 理論ポテンシャルは、自然や気象条件のみを制約条件として理論的に求めたポテンシャルであり、技術ポテンシャルは理論ポテンシャルに地理的な制約を加え、さらに効率などの技術的な制約を加味したポテンシャルです。さらにこの下には経済的な制約を加えた経済ポテンシャル(economic potential)、需要・技術競合・コスト・補助金等々実際に事業として成立するための条件を考慮した市場ポテンシャル(market potential)が続き、この順に量がどんどん小さくなっていきます。3.3 章で資源の埋蔵量について説明しましたが、理論ポテンシャルが原始埋蔵量経済ポテンシャルが可採埋蔵量にあたると考えていいでしょう。

 ではそれぞれの値を見ていきましょう。まず、太陽光ですが、理論ポテンシャルの値は 3.9 x 106 EJで、これは図 4.1 に示した利用可能な太陽放射 ~1 kW/m2 に対応するエネルギー量です。理論ポテンシャルとはこの程度のラフさ加減で求められる量であることを頭に入れておきましょう。

 技術ポテンシャルは推計の仕方によって 118 ~ 50,000 EJ と相当な開きがありますが、1 年間の世界全体のエネルギー消費(567 EJ)をまかなう量はありそうです。PV と CSP に分かれていますが、PV太陽電池(photovoltaic)、一方の CSP集光型太陽熱発電(concentrating solar power)の略で太陽熱を使うものです。

 現状の利用量は 2 EJ (585 TWh)程度で、技術ポテンシャルの 0.004~1.7 %程度しか使われていません。1998 年から 2018 年の 20 年間で、発電量は 10 倍になっていますが、まだまだこの程度です。

 最後の項目は設備容量(capacity)で、発電出力(power)を表しています。この値に設備利用率と1 年という時間(365 日 × 24 時間)を掛ければ発電電力量になります。

 つぎが風力です。技術ポテンシャルは太陽光よりはずっと小さく48 ~ 600 EJ現状の発電量4.6 EJ(1270 TWh)ですから、技術ポテンシャルの 0.8 ~10 % が利用されていることになります。昔から使われている水力やバイオマス(燃料含む)を除けば、もっとも発電量が大きい再生可能エネルギーが風力です。陸上風力(onshore wind)洋上風力(offshore wind)に分かれますが、設備容量で分かるとおり、洋上風力はまだまだこれからの分野です。洋上風力については第 6 章で詳しく述べたいと思います。

 さて、本講座の主題である海洋エネルギーはどうかというと、理論ポテンシャルは 7000 EJ で風力程度技術ポテンシャルは 1.8 ~ 333 EJ と大きな幅がありますが、風力の半分程度ですが、現状ではほとんど利用されていません。設備容量は 531 MW で、風力全体の 0.1 % にも届いていません。可能性を秘めているはいるが、なかなか使いにくそうなエネルギーという印象を受けます。

 

日本のポテンシャル

 つぎに日本のポテンシャルを見ていきましょう。

 日本では賦存量導入ポテンシャルという用語が主に用いられています。環境省によれば、賦存量とは設置可能面積、平均風速、河川流量等から理論的に算出することができるエネルギー資源量で、現在の技術水準では利用することが困難なものを除き、種々の制約要因(土地の傾斜、法規制、土地利用、居住地からの距離等)を考慮しないものをいうとありますので理論ポテンシャル導入ポテンシャルは賦存量の内数で、エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したエネルギー資源量で、「種々の制約要因に関する仮定条件」を設定した上で推計されると説明されていますから、技術ポテンシャルに相当します。

 表 4.2 に値を示します。日本のポテンシャルは設備容量で表されることが多いのですが、エネルギーの値も合わせて示しておきます。電力統計によれば、日本の総発電電力量は 2018 年度で 1,171 TWhですから、導入ポテンシャルで見ると太陽光が 132、陸上風力が 693、洋上風力が 3,650、海洋エネルギーが 150 TWhですから、総発電電力量のそれぞれ、11%、59%、312%、13%に相当し、洋上風力を除くとあまり大きな値ではありません。算出方法もあるでしょうが、国土の狭さが影響しているのと思われます。注目に値するのが洋上風力です。また、海洋エネルギーもポテンシャルでは太陽光を凌ぐ値となっています。この様に海に四方を囲まれている日本では海洋利用が重要なキーワードとなります。

 現状の発電量は、水力が 75、太陽光 65、バイオマス 20、風力が 11、地熱 2 TWh で海洋エネルギーはゼロです。これらの合計は 173 TWhとなり、総発電電力量の 15 %にすぎません。ポテンシャルの大きな風力や海洋エネルギーの利用があまり進んでいません。

 なお、表 4.2 のエネルギー値(PJ)は、発電電力量から単純に単位変換したものです。これを 3.3 章の 1 次エネルギーの値と比較してはいけません。なぜかというと、これらの値は総合エネルギー統計を元にしているのですが、原子力発電、事業用水力発電、未活用・再生可能エネルギーの電力量を一次エネルギー換算発熱量に変換するに際して、一般電気事業者発電の一次エネルギー換算発熱量(発電端、約 8.8 MJ/kWh、毎年度設定)を用いているからです。単純な単位変換では、3.6 MJ/kWh ですから、その 2.4 倍になっています。つまり、電力の平均転換効率で発電量を割って、熱量レベルで化石燃料とそろえる様な操作を行っているのです。

再生可能エネルギーの分類:変動性と非変動性

 さて、再生可能エネルギーをひとまとめにして取り扱ってきましたが、実は再生可能エネルギーにも 2 種類あります。ひとつは太陽光や風力のように、発電出力が気象条件により変動する変動性再生可能エネルギー(Variable Renewable Energy、VRE)であり、もうひとつが水力や地熱のように出力が比較的安定している非変動性再生可能エネルギーです。海洋エネルギーも VRE の仲間です。

 非変動性再生可能エネルギーは既存の火力発電と同じように取り扱うことができますが、VRE は出力を制御することができません。太陽光は夜の間は停止していますし、太陽光・風力とともに天候によって出力が常に変化するので電力システムに組み込むことが難しいのです。しかし、今、導入量が大きく伸びているのはこの VRE なのです。VRE を電力システムにどう組み込めばいいのか? VRE の大量導入に際しては様々な課題があります。これについては本章の最後に検討することにしましょう。

(更新 2021/05/17)

タイトルとURLをコピーしました