第8章 潮汐・潮流・海流発電 8.4潮流発電の技術と導入状況

 今回は潮流発電で使われている技術について概観するとともに、世界での導入状況、コスト、日本の状況について整理します。

潮流発電技術

図8-10 代表的な潮流発電タービンの形式

 潮流発電のタービンの形式としてはいろいろなものが提案されていますが、一般的なものは図 8-10 に示した水平軸タービンと垂直軸タービンの二つです。潮流は上げ潮、下げ潮で方向が変わるため、これに対応する工夫が必要です。

水平軸型タービン

  • 風力発電と同じように、流れに対して水平な回転軸に取り付けた 2・3 枚のブレードによって、潮流の運動エネルギーを回転運動に変え、発電機を回して発電する方式
  • 最も代表的な方式はプロペラ式で、多くのプロジェクトで採用されている
  • 流れの反転に対応するために、流れの方向に向きを変える「ヨー制御」や向きは変えないでブレードの取り付け角(ピッチ)を反転させる「ピッチ制御」などが行われている。固定ピッチのロータを同軸で前後に 1 対取り付けて流れの変化に対応するものもある

垂直軸型タービン

  • 回転軸が海水の流れに対して垂直であるタービン。揚力を利用したダリウス式や抗力を利用したサボニウス式が代表的である
  • 流れの方向に対する依存性が少なく、一般的にブレードの製造がプロペラ式に比べて容易であるなどの利点がある

 これらの従来型は海底設置でしたが、最近は浮体式も開発されています。大規模な設置工事が不要となり、コストダウンが計れます。

また、新しい方式として「カイト式」が登場してきました。8.5 で述べる海流発電の IHI の技術によく似ています。IRENA(国際再生可能エネルギー機関)の ”INNOVATION OUTLOOK OCEAN ENERGY TECHNOLOGIES” (2020) からポイントとなる部分を抜粋します。

  • 海底や浮体プラットフォームにつながれたカイト(凧)が、潮流に乗って八字型や直線型の軌道を描いて移動する
  • Minesto 社の凧は小さな潜水艦のような形をしている。その特殊な設計により、潮流凧は、凧の相対速度と実際の流速が掛け合わされるため、より高い電力を生み出すことができ、より低い絶対速度での運用が可能
  • フェロー諸島(デンマーク)とウェールズでのプロジェクトが予定されている。 フェロー諸島では、0.1 MW の商業用装置を 2 基設置し、ウェールズでは 10 MW を設置する予定で、将来的には 80 MW の発電所にスケールアップする予定。また、0.5 〜 3 MW で翼長 12 〜 24 m のタービンも検討されており、装置の大型化も進んでいる
図8-11 カイト式潮流発電
出典:IRENA ”INNOVATION OUTLOOK OCEAN ENERGY TECHNOLOGIES” (2020)

世界の導入状況

 世界全体の潮流発電の累積設備容量は 39.6 MW ですが、運転中のものはかなり少ないと思われます。欧州では 2010 年以降、30.2 MW が導入されていますが、このうち現在稼働中は 11.5 MW で、残りの 18.7 MW はテストプログラムの完了に伴い廃止されています。波力発電と同様、潮流発電も実証試験レベルにあるといえます。「8.2潮汐発電の特徴と導入例」の図 8-5 に「潮汐発電所」の設備容量を示しましたが、表の合計は 517 MWランス発電所だけで 240 MWありますから、現状の潮流発電の規模がいかに小さいか分かると思います。

 図8-12 には各年の導入量と累積発電容量を欧州と欧州以外に分けて示してあります。累積でみると 2/3 が欧州と「欧州優位」でしたが、最近は欧州以外の導入が増えています。波力のところでも書きましたが、欧州委員会が 2020 年に発表した「海洋再生可能エネルギーのポテンシャルを将来の気候ニュートラルのために役立てる EU 戦略」によれば、潮流と波力を合わせた導入目標は、2025 年までに 100 MW、2030 年までに 1 GW、2050 年までに 40 GWとなっています。今後の伸びが期待されます。

図8-12 世界及び欧州の潮流発電の年間・累積導入量

 稼働中の大規模な潮流発電プロジェクトとしては、スコットランドの MeyGen があります。図 8-13 にその概要を示します。

図8-13 MeyGenの概要

 MeyGenが実施されているスコットランド北部は潮流発電・波力発電の適地で、実海域試験を行うための民間研究機関の試験場 EMEC(European Marine Energy Centre)があり、ここで多くのテストが実施されているとともに、周辺には潮流・波力発電が計画されているサイトが多数あります。前述のSustainable Mrine社、Orbital Mrine Technology 社、Minesto 社も EMEC で実海域試験を行い技術を磨いています。この地域での商用プロジェクトのうち、現在、運転中は MeyGen の 6 MW だけですが、承認済は MeyGen2,3 や Orbital Marine Power のものなど合わせて 87 MW あり、さらに開発中が 542 MW もあります。これらが動けばスコットランド北部は海洋エネルギーの一大拠点となります。

図8-14 スコットランド北部の潮流発電
出典:https://www.renewableuk.com/page/UKMED2の地図に著者追記

潮流発電のコスト

 では、潮流発電のコストはどのくらいでしょうか? 波力、潮流、海洋温度差発電のコスト比較したものがありましたので、ここに載せておきます(図8-15)。コストは導入量が増えれば安くなります。この表では、最初のプロジェクト、二番目のプロジェクト、最初の商用プラントという三段階のコストを比較しています。それぞれの項目の最小値と最大値を記載しているので混乱しないよう注意してください。例えば、潮流発電の最初の商用プラントでは、プロジェクトの設備容量が 3 ~ 90 MW の時に、平滑化コスト LCOE が 130 ~ 280 $ / MWh であるということで、決して設備容量 3 MW の時に 130 $ / MWh だというわけでりません。設備容量が大きくなればコストは安くなるはずですよね。最初の商用化段階で130 $ / MWh なら CCS 付きの化石燃料発電よりずっと安価ですから、十分展開可能な数字だと思います。

図8-15 海洋エネルギー発電のコスト比較

日本の状況

では、最後に日本の潮流発電の状況について整理しておきましょう。日本では研究開発が中心です。

 NEDOの主な研究開発

  • 2011-2013年 着底式潮流発電(川崎重工)
  • 2012-2015年 浮体式潮流発電(三井海洋開発)
  • 2014-2015年 垂直軸直線翼型潮流発電(大島造船所等)
  • 2012-2015年 油圧式潮流発電(佐世保重工等)
  • 2012-2013年 橋脚利用式潮流発電(ナカシマプロペラ等)
  • 2013-2017年 相反転プロペラ式潮流発電技(協和コンサルタンツ等)

 その他、2016年には東北大がコスト試算を行い、淡路島と四国の間の鳴門海峡では 1 キロワット時の電気を 6 円 と推計しました。

 そして 2019 年に「長崎県五島市沖における潮流発電技術を実用化するための実証事業(環境省・九州電力)」が始まります。これは、長崎県五島市沖に(MeyGen と同じ)SAE 製の発電設備を設置し、国内初となる出力 500 kW 規模の潮流発電を実証するもので、発電設備の高さは 20 ~ 23.7m、重さは 1550 t 程度、回転数は 7 ~ 15 rpm、設備利用率は 40 % 程度を期待となっています。MeyGen のタービンが一機 1.5 MW ですから、だいぶ小さいですね。

日本初!五島市で、大型潮流発電機の実証事業開始。(環境省「潮流発電技術実用化推進事業」)
五島市のプレスリリース(2021年1月19日 16時30分)日本初!五島市で、大型潮流発電機の実証事業開始。(環境省)

 さらに、下記の記事ではさらに1MW級に改造して、「電力系統に連系した実証をすることで、発電機高効率化での発電コスト削減等による技術面の実用化と、商用化に向けたビジネスモデルを構築し、潮流発電システム商用化の見通しを得ることを目的としている」とのことです。ようやく本格的な商用潮流発電のプロジェクトが開始されたようです。

長崎県で大型潮流発電の実用化推進事業 九電みらいエナジーなど | ふくおか経済
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