第7章 波力発電 7.1 波のエネルギーとパワー

 

 洋上風力発電のつぎに、波力発電をとりあげましょう。この技術はわが国が先鞭をつけた海洋エネルギー技術のひとつです。まず、波のエネルギーとパワーの導出方法から学んでいくことにしましょう。

波の持つエネルギー

図7-1 波の各部の名前

 図 7-1 の様な波を考えみましょう。これは一定の振幅、波長、周期、速度で規則的に進む規則波(regular wave)です。一方、海の波はいろいろな波が混じった不規則波(random wave)ですが複雑なので、まず規則的な波から波の持つエネルギーを考えていきましょう。

 波は水平方向に広がっています。そこで波の持つエネルギーを考える時には単位表面積あたりのエネルギーを考えます。図 7-2 の様な単位面積当たりの水柱を考え、波のエネルギーを水柱の持つ平均エネルギーと定義します。水面は上下運動を繰り返していますので、位置エネルギー(\(E_p\))と運動エネルギー(\(E_k\))を求め、その和が波の持つエネルギーになります((1)式)。

図7-2 波のエネルギーの導出

$$ E=E_p+E_k \tag{1}$$

 まず位置エネルギーからどのように表現されるか考えてみます。波の水位を \(\eta\) とすると、進行方向の幅 \(\Delta x\) の水柱の持つ位置エネルギー\(dE_{p1}\)は (2) 式のように表現できます。ここで \(\rho\) は海水の比重、\(g\) は重力加速度です。

$$ dE_{p1}=\int_{-h}^\eta \rho gzdxdz = \frac{1}{2} \rho g(\eta^2 – h^2)dx \tag{2} $$

 波の無い場合の位置エネルギー \(dE_{p2}\) は \(\eta = 0\) ですから、

$$ dE_{p2}=\int_{-h}^0 \rho gz dz =- \frac{1}{2} \rho g h^2dx \tag{3} $$

 波のない状態を位置エネルギーの原点とすると波の位置エネルギーは

$$ dE_{p}= dE_{p1} – dE_{p2} = \frac{1}{2} \rho g \eta^2dx \tag{4} $$

 ここに規則波の水位変化 \(\eta=a \cos (kx-\omega t) \) を代入し、1波長分の平均をとると

$$ \overline{E_p}= \frac{1}{L} \int_x^{x+L} \frac{1}{2} \rho g a \cos (kx-\omega t) ^2dx \tag{5} $$

$$ = \frac{1}{4}\rho ga^2 = \frac{1}{16}\rho gH^2 \tag{6} $$

 と (6) 式のように振幅や波高のみで表されるようになります。

 つぎに運動エネルギー \(E_k\) ですが、微小体積 \(dxdz\) の運動エネルギーは、水平流速を \( u\)、鉛直流速を \(w\)とすると (7) 式のように表すことができます。

$$dE_k=\frac{1}{2} \rho (u^2+w^2) \tag{7} $$

 波の運動エネルギーは \(Z\) 方向に \(-h\) から\( 0\)(水位変動の部分は影響が小さいとして無視)まで積分し、波長\( L \)で平均すると

$$ \overline{E_k}=\frac{1}{L} \int_0^L dx \dot {\int_{-h}^0 \frac{1}{2} \rho(u^2+w^2)dz} = \frac{1}{16}\rho g H^2 \tag{8} $$

 となりポテンシャルエネルギーと同じになります。

 従って、単位面積の水柱が持つ波の平均エネルギー\(\overline{E}\) は (9)式のように波高 \(H\) だけで簡単に表すことができます。

$$ \overline{E} = \overline{E_p} + \overline{E_k} =\frac{1}{8}\rho g H^2 \tag{9} $$

波の持つパワー

 単位面積あたりのエネルギーに伝播速度 \(c_g\) をかけると、単位幅当たりのエネルギーの流れの量であるエネルギーフラックス(エネルギー流束)になります。これはある位置を通過する波のエネルギーの量であり、波の進行方向と垂直の単位長さ当たり、単位時間当たりのエネルギーで表され、波パワー(\(P\)、単位は \(W/m\))とも呼ばれています。

$$ P= \overline{E} c_g = \frac{1}{8}\rho g H^2 c_g \tag{10} $$

 さてこの伝播速度 \(c_g\) は群速度と呼ばれるものです。群速度とは複数の波を重ね合わせた時にその全体(包絡線)が移動する速度のことです(図7-3)。

図7-3 群速度

 群速度は水深によって異なりますが、深水域(\(h/L>0.5\)、ここで\(h\) は水深、\(L\) は波長)では周期を \(T\) とすると (11)式のように表されます。

$$ c_g=\frac{gT}{4\pi} \tag{11} $$

 従って、規則波の波パワーは (12)式 となります。

$$ P= \frac{\rho g^2 H^2 T}{32 \pi} \tag{12} $$

 海水の比重 \(\rho=1030 kg/m^3\) とすると規則波のパワーは (13)式になります。

$$ P= 0.985 H^2 T \hspace{10pt} [kW/m] \tag{13} $$

 一方、海の波はいろいろな波が混じり合った不規則波です。この場合には図 7-4 に示す有義波を用いて取り扱います。N 個の波を観測し、大きい順に並べ、そのうちの N/3 の波を有義波と呼びます。有義波の波高と平均周期を\(H_w\), \(T_w\)とおくと波パワーは (14)式のようになり、規則波の半分程度の値となります。

$$ \overline{P} \simeq 0.5 H_w^2 T_w^2 \hspace{10pt} [kW/m] \tag{14} $$

本項を書くにあたっては、以下を参考にしています。川西澄「海岸工学テキスト」(https://home.hiroshima-u.ac.jp/kiyosi/coastalEng.pdf)、大阪工業大学海岸水理学エネルギー・伝達エネルギー(https://www.oit.ac.jp/civil/~coast/coast/Energy-note.pdf)

(更新 2021/12/07)

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