第2章海洋と気候変動 2.2 地球温暖化の現状

 ここでは地球温暖化の現状がどうなっているのかについて知るために、世界全体及び日本の平均気温の推移を調べてみましょう。また、熱が主にどこに蓄積されているかについても考えてみます。

世界の平均気温の変化

 まず、世界の「平均気温」について調べますが、その前に、この「平均気温」をどのように測定するのか明確化しておきたいと思います。 

  陸上では気温は「温度計」で測定されます。 地上から 1.25 〜 2.0 m の高さ日本の場合は気象庁が 1.5 m と定めています)で、温度計を直接外気に当てないようにして測定することとが世界気象機構(WMO) によって定められています。陸上の気温観測所は世界中でおよそ 7000 前後あり、これらのデータに海洋のデータも加えて「平均気温」を求めます。さて問題はこの海洋の気温測定です。

 気象庁( https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/clc_wld.html )によれば、 海面水温の変化は、広域的・長期的には直上の海上気温の変化と同じとみなせることが確かめられています。均質な海上気温データを整備することは難しいので、表面付近の海水温(海面水温( sea surface temperature、SST ))で代用します。海面水温の測定には船舶による測定とともに人工衛星による測定が広く用いられています。現在は、船舶等による観測、人工衛星による赤外観測やマイクロ波観測、観測データの融合処理手法などを駆使して、全ての海域を対象に 1 – 50 km の空間解像度で、1 日 1 回はデータが作成される体制になっているとのことです(東北大学「人工衛星を利用した海面水温観測の進展」)。

 地球の「平均気温」は、 地球の全地表面を緯度方向 5 度、経度方向 5 度の格子に分け、月ごとに基準値( 30 年平均値)を差し引いて 各格子の月平均気温の偏差を算出します。 前回述べた様に、気候の地域性や時間的な変化を解析する際の基準として平年値が用いられます。そして、この平年値からのズレ(偏差)で「平均気温」を表すのです。


 では、世界全体の平均気温の推移を見ていきましょう。図 2.1 は気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)第5次評価報告書(AR5: fifth assessment report)統合報告書(synthesis report)に記載されている 世界の平均気温 (annual global mean surface temperature 、GMST)の偏差の推移を示す図です。IPCCについてはコラム 2.1を参照ください。

図2.1 世界の平均気温(陸域+海上)の偏差の推移
IPCC第5次評価報告書統合報告書政策決定者向け要約 日本政府翻訳

 1986~2005年の平均値に対する偏差となっている点に注意してください。3 色の線が混じっていますが、これはデータセットが異なることを示します。 黒が イギリス気象庁ハドレーセンターの HadCRUT4 、水色が 米国航空宇宙局 (NASA)ゴダード宇宙研究所の GISS 、橙が 米国海洋大気庁(NOAA)気候データセンター のNCDC MLOSTのデータです。

 このグラフから IPCC は「地球の表面では、最近 30 年の各 10 年間はいずれも、1850 年以降の各々に先立つどの 10 年間よりも高温であり続けた。(中略)陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、線形の変化傾向から計算すると、独立して作成された複数のデータセットが存在する 1880 ~ 2012 年の期間に 0.85 [ 0.65 ~ 1.06 ]℃ 上昇している、と結論づけています。

日本の平均気温の変化

 つぎは日本の場合です。図 2.2 は気象庁のデータです。 2019 年の日本の平均気温の基準値(1981~2010 年の 30 年平均値)からの偏差は +0.92 ℃で、1898 年の統計開始以降で最も高い値となっています。気温は変動があるものの上昇しており、その上昇率は 100 年あたり 1.24 ℃です。特に 1990 年代以降、高温となる年が増えているとのことです。

図2.2 日本の年平均気温の変化
細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1981〜2010年の30年平均値。
気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html

海洋の温度上昇

 このように地球の気温は上昇を続けています。つまり蓄積される熱エネルギーが増加しているのですが、この熱は地球のどの部分に蓄積されているのでしょうか? その答えとなる図が IPCC 第 5 次報告書統合報告書にあります。

 図 2.3 は地球に蓄えられる熱エネルギーの経年変化を大気、陸地、海洋などの部位別に表したものです。熱の蓄積は主に海で起こっており、驚くべきことに水深 700 m 以浅の表層ばかりでなく、700 m 以深の深海に蓄えられる熱も同じように増加しているのです。前章で海洋が地球の熱のプールであると書きましたが、この図を見るとこのことが実感できますね。

図2.3 地球の気候システム内部のエネルギー蓄積量
IPCC第5次評価報告書統合報告書 日本政府翻訳

 IPCC 第 5 次評価報告書統合報告書はこのことを次の様に述べています。

気候システムに蓄積されているエネルギーの増加量の大部分は海洋の温暖化で占められており、1971 ~ 2010 年の間に蓄積されたエネルギーの 90 %以上を占め(確信度が高い)、大気中における蓄積は約 1 % に過ぎない。世界規模で、海洋の温暖化は海面付近で最も大きく、1971 ~2010 年の期間において海面から水深 75 mの層は 10 年当たり 0.11 [ 0.09 ~ 0.13 ] ℃昇温した。1971~2010 年において、海洋表層(0~700  ⅿ)で水温が上昇したことはほぼ確実であり、また 1870 年代から 1971 年の間については水温が上昇した可能性が高い。  1957 年から 2009 年にかけて水深 700~2000 m の層で海洋は温暖化し、1992 年から 2005 年にかけて、水深 3000 mから海底まで海洋は温暖化した可能性が高い

((PCC 第5次評価報告書統合報告書)

(更新 2020/09/12)

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