第1章海洋についての基礎 1.2 太陽からのエネルギー放射と地球のエネルギーバランス

 ここでは、地球のエネルギーバランスについて考えていきます。この議論は第2章の「海洋と地球環境」の中でさらに展開されます。

すべては太陽から始まる

 地球は太陽に照らされています。潮汐や潮流を除く、地球上のエネルギーの大半は太陽エネルギーが起源です。私たち人間を含む生物も太陽に育まれて生きているのです。つまり、 すべては太陽から始まります。

 図1.3 を見てください。太陽はあらゆる方向に1,370 W/m2 のエネルギーを放射しています。地球も断面積あたり1,370 W/m2 のエネルギーを受けています。 表面積あたりで 地球が受けるエネルギーはその1/4、すなわち342 W/m2 となります。この342 W/m2 は一年を通しての平均値です。地球には昼もあれば夜もあり、季節もあります。これらを平均した値が342 W/m2 なのです。

図1.3 太陽からの放射エネルギー

 このエネルギーは電磁波の形で降り注いでいます。その波長は紫外から赤外域に及びますが、全エネルギーの約半分は可視光域(波長400~800 nm)にあり、残りのほとんどが赤外線(波長>800 nm)となります。これを「短波放射(shortwave radiation) 」あるいは「太陽放射 (solar radiation) 」と呼びます。

  エネルギーを受け取るだけでは温度がどんどん上昇していきますから、地球はエネルギーを放出させてバランスをとっています。

地球のエネルギーバランス

 地球のエネルギーバランスを図1.4 に示します。 数字は入射する太陽放射を100としたときの相対値です。

図1.4 地球のエネルギーバランス(年平均)
IPCC第4次評価報告書を元に筆者作成

 入射した太陽輻射のうちの 31 % が地表や雲などによって反射されて宇宙へ戻っていきます。20 % は大気に吸収されてしまい、地表面に到達するのは 49 %です。地表面で吸収されたエネルギーのうち、30 % は地表から大気への顕熱輸送と水の蒸発による潜熱輸送によって大気へ熱を移動します。さらに、地球表面からは赤外線が放射されます。地球は太陽から可視光を中心とする電磁波を吸収し、今度は赤外線という電磁波を放出するのです。この放射を赤外線は波長が長いことから、「長波放射 (long-wave radiation) 」と呼びます。

 なぜ、太陽からの放射が短波放射で、地球からの放射が長波放射なのでしょうか? これは太陽と地球の温度の違いによるものです。 太陽の表面温度は5,780 K、一方の地球は15℃(288 K)です。Stefan-Boltzmann則によれば、「熱を持つ物体はすべてエネルギーを放射し、単位面積あたりのエネルギー量は物体の温度の 4 乗に比例」します。また、熱平衡の状態にある物質から放射される電磁波の波長と強度の関係を表すプランクの放則によれば、「物質の温度が高ければ高いほど波長のピークは左に移動し、波長の長い電磁波が放射される割合が多くなります」。この関係を示すのが図 1.5 です。約 6,000 K の温度の太陽からの放射は強くて波長に短い可視光領域にあり、約 300 K の地球からの放射は弱くて波長の長い赤外領域にあることがわかります。

図1.5 StefanBoltzmann 則とプランク則

 地表面からの赤外線放射は、宇宙まで放射される一部を除いて、大部分が大気に吸収されます。そして、温められた大気はまた四方八方に赤外線を放射するのです。四方八方ですから、当然、下向きの放射もあります。そして、この下向きの放射がまた地表面に吸収されるのです。

 このようにして、地球のエネルギーバランスが成立しています。本当にバランスが取れているのか、図 1.4 から確かめてみましょう。

(地球全体のエネルギー収支 )

 地球へ入るエネルギー(100)=宇宙空間へ放出されるエネルギー(31+12+57)=100

(大気のエネルギー収支)

 大気へ入るエネルギー(20+30+102)=大気から放出されるエネルギー(95+57)=152

(地表面のエネルギー収支)

  地表面へ入るエネルギー(49+95)=地表面から出るエネルギー(30+114)=144

 確かにバランスが取れていますね。地表では、太陽から獲得したエネルギーの約 2 倍のエネルギーを熱放射してしまうので、これだけだと地球はどんどん冷えてしまいますが、実際はその大部分が大気に吸収され、再放射されて地表に戻ってくるのです。この現象を「温室効果」と呼びます。これについては第2章で詳しく調べます。

海洋と大気の関係

 図1.4 の地表から大気への顕熱輸送と潜熱輸送は主に海表面で行われています。海水の熱容量は大気全体の熱容量の 1,000 倍もあるため、大量の熱が海に蓄えられます。また、この大きな熱容量のために、大気とは違って温度の変化がゆっくりしています。つまり、海は大量の熱を蓄えており、大気の大きな熱源となっているのです。

注)熱容量(J/K):温度を1度(K) 上昇させるのに必要な熱量(J)であり、単位重量あたりではありません。比熱(J/(g・K) とは異なることに注意してくださ。

(更新 2020/08/22)

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