第4章 再生可能エネルギー 4.2 力学的エネルギーの変換 水力発電

 

 再生可能エネルギーは自然エネルギーです。太陽光、地熱、海洋温度差、バイオマス以外の再生可能エネルギーは水や風の「流れ」を利用して発電するものです。つまり、力学的エネルギーから電気エネルギーへの変換が行われるのです。今回は水力発電を取り上げて、位置エネルギーから流体エネルギー、そして電気エネルギーへと変換する様子を調べてみましょう。これは第 8 章で述べる潮汐力発電の原理と同じものです。

水力発電の仕組み

 水力発電(hydropower generation)は水の力学的エネルギーから生み出される流れ羽根車(タービン、turbine)に当てて、発電機で回転エネルギーから電気エネルギーを産み出す発電方法です。

 水力発電には河川から長い水路で水を引き込み、落差を利用して発電する水路式、ダムで水をせき止めて人工湖をつくり、その落差を利用して発電するダム式、ダムで貯めた水を水路に引き込み、落差を利用して発電するダム水路式がありますが、図 4.2 に示すようにエネルギーの源は落差(head)、すなわち位置エネルギーです。

図4.2 水力発電の仕組み

 水力発電で用いる水車にもいろいろな種類があり、水量や落差によって使い分けられます。図 4.3 は最も一般的なフランシス水車の写真です。

図4.3 水力発電のタービン

水力発電の理論出力

 水力発電の出力はどのようにして決まるのでしょうか? その式を導いてみましょう。

 図 4.2 に示す様に、ダムに貯められた水は水路を通って下に流れ、タービンを回します。ダムからタービンまでひとつの水路と見なせ、ここにエネルギー保存則が適用できます。

 質量 \(m\)、流速 \(v\)、圧力 \(p\)、基準水平面からの高さ \(h\)、水の密度 \(\rho\)、重力加速度を \(g\)とすると、流体の持つエネルギーは(1)式の様に、位置エネルギー、運動エネルギー、及び圧力エネルギーの和として表現され、保存されます。これをベルヌイの定理といいます。つまり、位置エネルギーがその量を保存したまま、運動エネルギーと圧力エネルギーへと形をかえていくのですね。タービンの位置で考えて、流速や圧力からエネルギーを求める事ができますが、水位差からエネルギーを算出するのが簡単です。

$$mgh+\frac{1}{2}mv^2+\frac{pm}{\rho} =一定 \tag{1}$$

 各エネルギーの単位を考えてみましょう。位置エネルギーは \(N \cdot m=kgm/s^2 \cdot m=kgm^2/s^2\)、運動エネルギーは \(kgm^2/s^2\) 、圧力エネルギーは \(N/m^2 \cdot kg/(kg/m^3)=N/m^2 \cdot m^3=N \cdot m=kgm^2/s^2\) とすべて同じ \(kgm^2/s^2\) ですから、これを \(mg\) で割ると各項とも単位が[m]になります。つまり、運動エネルギーや圧力エネルギーを「高さ」に換算できるようになるのです

\begin{align} h+ \frac{{v}^2}{2g}+\frac{p}{g\rho}=H_G \tag{2} \end{align}

 この高さを総落差(gross head)と呼びます。head は「水頭」と訳すこともあります。(2)式の第一項を位置ヘッド、第二項を速度ヘッド、第三項を圧力ヘッドといい、\(H_G\) は全ヘッドと呼ばれることもあります。

 この \(H_G\) から管路内部での流体摩擦を差し引いた \(H\) が水車が受けるエネルギー、有効落差(effective head)です。

 流量を\(Q [m^3/s]\)とすると、水車の理論的な最大出力\(P_{th} [W]\)は(3)式の様に表せます。

$$P_{th}=\rho QgH \tag{3}$$

 実際の正味出力は水車の流体摩擦、軸受け摩擦などの機械損失などのためにもっと小さくなり、全効率を \(\eta\) とすると(4)式で表せます。水力発電の全効率は 80 %程度とかなり高い値になっています

$$P=\eta \rho QgH \tag{4}$$

(更新 2021/05/06)

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