第7章 波力発電 7.3 波力発電のポテンシャル

 波のエネルギーを何らかの装置で力学的エネルギーとして取り出し、さらに電気エネルギーに変換すれば発電することができます。この「装置」については次項で考えるとして、ここでは日本で波力発電を実施するとしたらどのくらいの電力が発電可能なのかについて考えることにします。

波パワーと発電出力

 波力発電装置で発電できる電気の出力 \(P_g\) は次式で表されます。

$$ P_g=\eta_{overall} \overline{P}B \tag{1} $$

 ここで\( \overline{P}\) は波パワー、\(B\) は波の幅、\( \eta_{overall} \) は波力発電装置の効率です。この効率は波から取り出せる力学的エネルギーの効率、発電機の効率、油圧ポンプの効率等からなります。

波力発電のポテンシャル

 (1)式を用いて日本の周囲の波力発電のポテンシャルを求めてみましょう。計算には波を受ける距離 と波パワーの値が必要です。

 表 7-1 は これまでに算出された波力発電のポテンシャルです。初期のものでは波パワーの平均値を仮定し、これに日本の全周距離を掛ける方法で概算値を算出していますが、NEDOによる算出では、日本周辺の海域をメッシュに刻み、各メッシュのポテンシャルを計算した後、足し合わせる方法がとられています。どのくらいの離岸距離で考えるかで値が異なります。沖合になるほど波パワーの値は大きくなりますし、日本を囲むラインの長さが長くなるので、ポテンシャルが大きくなります。賦存量は離岸距離100kmの外周ラインで線積分された波のパワー(つまり効率がかかる前)の値、導入ポテンシャルの現状技術は沖合係留方式を想定し、離岸距離が 30 kmでかつ水深が 100 m 以浅で波パワーがおそらく15 kW/m 以上のところに設置したケース、将来技術は浮体式を想定し、離岸距離 100 km の外周ラインで波パワーがおそらく 20 kW/m を超える場所に設置したケースと思われます。「おそらく、思われます」と歯切れが悪いのは、元となるだろう論文(山田、中田「 日本の海洋エネルギーポテンシャルの評価」)と少々値が異なっているからです。本論文では発電効率を 30 % と置き、また発電ポテンシャルを計算する際の設備利用率を 40 % としています。

表7-1 日本の波力発電ポテンシャル (出典:NEDO再生可能エネルギー技術白書(第二版))

(更新 2021/12/09)

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