第6章 洋上風力発電 6.3 洋上風力発電の世界の導入状況と傾向

 それでは世界における洋上風力の導入状況がどうなっているかみてみましょう。まず、世界全体ならびに国別の累積発電設備容量を調べ、つづいて導入が進んでいる欧州の状況を述べたあと、導入傾向について分析します。

洋上風力の世界の導入状況

 世界全体の洋上風力の累積設備容量は図 6-11 の様に年々増加しており、2019 年には 27.7 GW、2020 年には 31.9 GW に達しました。著しい伸びですが、それでも風力全体の 5 % 程度にすぎません。ではどの国で導入が進んでいるのでしょうか? まず風力全体では、2012 年以降、中国のトップが続いています(図 6-12)。そのあと米国、ドイツが追いかけています。日本はというと、第 18 位と低調です。洋上風力では図 6-13 に示す様に英国がトップです。「5.3 海洋エネルギーについての世界の動き」で述べたように英国は海洋エネルギー全体をリードしています。2012 年に脱原発法が制定されたドイツが 2014 年から洋上風力の導入を加速させます。中国がこれを追いますが、最近の新規導入量は中国がトップで、累積発電設備容量でもドイツを追い越しそうな勢いです。これに対して、日本はまだまだこれからという位置にあります。 

図6-11 洋上風力の導入量 
出典:IRENA Renewable Energy Capacity Statistics 2015 (2000-2009), 2020 (2010-2019)より筆者作成
図6-12 風力発電の国別導入量
図6-13 洋上風力発電の国別導入量 
出典:IRENA Renewable Energy Capacity Statistics 2015 (2000-2009), 2020 (2010-2019)より筆者作成

欧州における風力発電設備の導入状況と傾向

 つぎに洋上風力の導入が盛んな欧州を例に風力発電の導入状況とその傾向をみていきましょう。図 6-14 に欧州における洋上風力発電ファームの位置図を示します。ポルトガルも洋上風力導入が盛んですが、この地図では省略してあります。円が洋上風力ファームの位置を示しており、凡例にあるように、緑が運転中、黄色が一部運転、オレンジが建設中を表します。洋上発電設備は主に北海にあり、アイリッシュ海やバルト海がこれに続いています。北海は大陸棚で、平均水深が 90 m しかありません。偏西風帯に位置し、強い西風が常に吹いています。まさに洋上風力の適地です。

図6-14 欧州の洋上風力発電ファームマップ(南部を除く)
出典:Wind Europe “Offshore Wind in Europe” (2020)を筆者一部加工

洋上風力発電ファームのサイズ

 風力タービン一機のサイズについては6.1で述べました。2020 年の平均出力は 8 MW を超えています。では、ウィンドファームのサイズはどうでしょうか? 図 6-15 にサイズの変遷状況を示しています。2011 年から 2016 年あたりまでは 400 MW で推移していますが、その後、伸び始め 2020 年には 800 MW に達しようとしています。平均タービンサイズが 8 MW ですから、ひとつのファームが100 機の風力発電タービンを持っていることになります。

図6-15 欧州における洋上風力発電ファームのサイズの推移
出典 Wind Europe “Offshore Wind in Europe” (2020)

設備利用率

 図 6-15 は英国、ドイツ、デンマーク、ベルギーで導入済みの洋上風力発電ファームの設備容量と設備利用率を示しています。設備利用率の大きなものから小さなものに順に並べられており、円の大きさが設備容量を表しています。欧州の場合、洋上風力の設備利用率は最大 0.55 近くにまで達しており、風況が極めていい場所に設置していることが分かります。比較のために、日本で代表的な洋上風力発電の候補地である石狩湾、津軽半島沖、能代沖、由利本荘の年間平均風速から推測される設備利用率を赤線で示しました。日本で風況がいいといわれている北海道・東北の日本海側の設備利用率は 0.35 で欧州でいえば下限に近くにあります。なお、この図には英国の浮体式洋上風力ファーム Hywind Scotland(2017 年運開)が記載されていますが、英国で最大の設備利用率になっています。浮体式は着床式よりコストアップになるため、極めて風況の良い場所でないと経済的に成立しないのだと考えられます。

図6-15 欧州の洋上風力発電ファームの設備利用率の比較
出典:IRENA “Offshore Renewables: an action agenda for deployment, A CONTRIBUTION TO THE G20 PRESIDENCY” (2021)に筆者追記。日本のケースについては本部・立花「風況の違いによる日本と欧州の洋上風力発電経済性の比較 -洋上風力発電拡大に伴う国民負担の低減を如何に進めるか」を参考にした。

離岸距離と水深

 つぎの図 6-14 は欧州の洋上風力発電ファームの離岸距離と水深を調べたものです。この図のプロットは主に水深 60 m 以下の着床式ですが、離岸距離は運転されているものでは 100 km あたりまで延びています。さらに許可済みの計画案件(黄色)では離岸距離が 200 km というものまであります。より強い風を求めて沖合に出て行こうとしています。また、沖合では他の産業活動への影響が小さくなり、景観問題も最小化できるというメリットがあります。一方で、離岸距離が大きくなると送電費用や建設・操業費用が増加します。長距離送電でもコストが抑えられる HVDC(直流高圧送電)という技術を使うことによって、この大きな離岸距離が可能になろうとしています。それにしても、岸からの距離が 200 km 離れても水深が 30 m というのはすごいです。日本ではとても考えられません。

 つぎに浮体式ですが、赤い円の中に小さな点があります。見落としてしまいそうなので円を描いて強調しました。浮体式はまだこれからの技術で試験設備の位置づけですから離岸距離も 50 km までです。今後本格的な運用となればより沖合に出て行くことが予想されます。

図6-16 欧州の洋上風力発電ファームの離岸距離と水深
(出典 :Wind Europe “Offshore Wind in Europe” (2020)に筆者追記)

導入例

 では、最後に欧州における洋上風力設備の写真を見てみましょう。図 6-17 には着床式の洋上風力の例を示します。左側の英国のHornsea1は世界最大の洋上風力ファームで設備容量が 1,214 MW(121.4 万 kW)で、これで原子力発電所一基分に相当します。図 6-18 がポルトガルの浮体式(セミサブ)です。写真左上に洋上石油開発のセミサブ式プラットフォームの写真がありますが、洋上風力が洋上石油開発の技術を応用していることがよくわかりますね。最後の図 6-19 は英国スコットランドの世界最大の浮体式洋上風力ファーム(スパー式)の写真です。右側の図にビッグベンとの大きさの比較が描かれていますが、いかにも大きなものですね。

図6-17 欧州の洋上風力の導入例(着床式)
図8-18 欧州の洋上風力導入例(浮体式 セミサブ)
図6-18 欧州の洋上風力導入例(浮体式 スパー)

(更新 2021/11/15) 

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