第5章 海洋エネルギー概論 5.4 海洋エネルギーについての日本の動き

 これまで、海に出る理由、海洋エネルギーのポテンシャル、海外の動向と調べてきました。最後に、日本の海洋エネルギー関連の政策について調べようと思います。

原油価格等と日本の海洋エネルギー政策

 前に政策や制度は「国の意思」によって大きく変化すると述べました。そして、「国の意思」はさまざまな外的要因の影響を受けます。では、本講座のテーマである「海洋エネルギー」関連の政策に影響を及ぼす外的要因はなんでしょうか? それぞれの政策についての説明に入る前に、まず、その事を考えてみたいと思います。

 では、図 5-9 を見て下さい。この図は。原油価格の推移を表すグラフに、オイルショック、リーマンショック、京都議定書、東関東大震災、パリ協定、尖閣諸島での中国との衝突などの「事件」を書き込んでいます。さらにグラフの上部に海洋エネルギーの開発が活発な時期とそれに関係する政策について書き込みました。

図5-9 海洋エネルギー政策と原油価格およびその他の事件

 海洋エネルギーの開発が活発な時期(青い矢印)は 1974 年~ 2002 年そして 2013 年~現在です。最初の 1974 年~ 2002 年 は国の大型プロジェクトである「サンシャイン計画」とその後継の「ニューサンシャイン計画」が行われた時期に重なります。「サンシャイン計画」の開始は 1974 年、この前の年に第 1 次オイルショックが起こります。第 4 次中東戦争をきっかけに、OPEC が原油の供給制限と輸出価格の大幅な引き上げを行い、国際原油価格は 3 カ月で約 4 倍に高騰し、世界経済は大混乱になります。エネルギー価格の高騰は当然ながらエネルギー政策に影響を及ぼします。第 1 次オイルショック後、中東の原油に頼らないエネルギーを開発しようという機運が盛り上がるのです。北海油田の開発もこの時期です。また、世界中で自然エネルギーを活用しようという動きが始まります。この流れを受けて、「サンシャイン計画」では、石炭液化、太陽光、地熱、水素などの重点テーマに 5,322 億円の国費を投じ、大規模な研究開発が進められます。 海洋エネルギーは サンシャイン計画のメインテーマではありませんが、「総合研究」というくくりの中で、海洋温度差発電(OTEC)の技術開発が行われています(1974~78年)。自然エネルギーを開発しようという「国の意思」の下で、海洋エネルギーについてもさまざまな研究開発が行われます。波力発電については、海洋科学技術センター(現、JAMSTEC)を中心に開発が開始され、1986 年に油価が大幅に下がった後も 2003 年ごろまで開発が続けられます。潮流発電については来島海峡でのダリウス水車の実証試験が 1980 年代に行われています。やがて原油価格の低迷期に入り、新エネルギーの開発のドライビングフォースがなくなります。それでも研究は継続されていたのですが、安価な石油とのコストの差は歴然としているため研究開発がどんどん下火になって行き、2003 年以降は本格的なプロジェクトが見られなくなります。

 そして 2013 年、再び海洋エネルギーのブームがやってきます。この時期は、BRICS が経済成長を遂げた為、石油不足から原油価格の高騰が続く時期に重なります。それに加えて地球温暖化への危惧が世界問題となり、「京都議定書」が締結され、主要先進国に CO2 排出削減義務が課せられ、世界的に「脱化石燃料」の機運が高まります。そこに 2011 年の「東関東大震災」が起こったのです。福島の原子力発電所がメルトダウンし、わが国の原子力発電所はすべて停止という事態に直面します。原子力発電分の電力を化石燃料とくに天然ガスを増やすことでまかなう様に舵をきりますが、化石燃料の一層の価格高騰を引き起こします。この状況を打開するため、わが国も後ればせながら再生可能エネルギーの開発に力を入れていくのです。再生可能エネルギーの固定価格買取制度が閣議決定されたのもこの年です。この様な外的因子により、「国の意思」は「再生可能エネルギーを増加させる」方向に向きます。そして、再生可能エネルギーの一つである海洋エネルギーにも再び光が当たり始めるのです。

 この時期、もう一つ重要な事件が持ち上がります。それは尖閣諸島をめぐる中国との対立です。1969 年に国連の報告書で東シナ海に石油埋蔵の可能性があることが指摘されると 1971 年になって、中国は尖閣諸島の「領有権」について独自の主張をするようになりました。さらに 1992 年に尖閣諸島を中国領土と記載した領海法を制定し、2008 年以降、公船を尖閣諸島沖に派遣して領海にも度々侵入する状況が続きました。そんな中、2010 年には尖閣諸島中国漁船衝突事件が起こり、日本政府の対応への報復措置として中国はレアアースを禁輸します。さらに、2012 年の尖閣諸島国有化によって中国との関係は最悪のものとなり、中国船の領海侵犯は常態化し、今日まで続くのです。この中国の海洋進出は 2007 年の「海洋基本法」制定につながります。そもそも、わが国は 1992 年に「国連海洋法条約」に批准し、領海が 12 海里に拡大し、さらに 200 海里に及ぶ排他的経済水域(EEZ)を手に入れたのですが、国際的枠組みに基づく海洋管理の取組が立ち後れていました。そして、尖閣問題、韓国との竹島問題等、わが国周辺の海域でいろいろな事件が起こり、海に関する社会の関心た高まってきたのを背景に、ようやく 2007 年に総合的な海洋政策推進の要となる「海洋基本法」が制定されたのでした。詳細は次項以下で述べますが、海洋基本法では 5 年毎に「海洋基本計画」を立て実行していくことになっています。さらに、海洋基本計画には、海洋エネルギー・鉱物資源を計画的に推進するため、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を策定することが定められます。2013 年に制定された「第 2 期海洋基本計画」では、原油高、地球温暖化問題、原発停止、近隣海域での紛争を背景に、海洋エネルギーと EEZ 海域の海底鉱物資源開発にかなり力が入っています。一方、2018 年の 「第 3 期海洋基本計画」 では海洋エネルギーが洋上風力に絞られるようになり、 鉱物資源開発も少しトーンダウンしています。

 つぎの海洋基本計画の改訂は 2023 年です。前述のようにわが国は地球温暖化問題に対処するために、「2050 年カーボン・ニュートラル」に舵を取りました。2021 年にはそれを受けた「第 6 次エネルギー基本計画」が策定されます。カーボン・ニュートラルを達成するためには、多量の再生可能エネルギーを導入する必要があります。しかし、わが国の国土は狭く、人口は多く、正直なところ再生可能エネルギー向きの立地ではありません。さて、どうすればよいのか? 自然と海洋に目が向きます。今、洋上風力に熱い視線が向けられています。でも、それだけでいいのでしょうか? EU は洋上風力以外の海洋エネルギーにも視線を向けています。日本はどうするのか? 2023 年の第 4 期海洋基本計画が楽しみです。

日本の海洋政策の流れ

 つぎに、2013 年以降の海洋エネルギー開発に影響を与える「海洋基本法」、「海洋基本計画」を中心に海洋エネルギー関連の政策を振り返ります。

海洋基本法(2007年)

 2007 年に制定された「海洋基本法」の第一条を見てみましょう。

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、地球の広範な部分を占める海洋が人類をはじめとする生物の生命を維持する上で不可欠な要素であるとともに、海に囲まれた我が国において、海洋法に関する国際連合条約その他の国際約束に基づき、並びに海洋の持続可能な開発及び利用を実現するための国際的な取組の中で、我が国が国際的協調の下に、海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することが重要であることにかんがみ、海洋に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに海洋に関する基本的な計画の策定その他海洋に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的とする

海洋基本法 太字筆者

 ここに海洋基本法のエッセンスが凝縮されています。日本が「新たな海洋立国を実現することが重要」との文言があります。ここに「国の意思」が表明されています。

 第二章では 第一章の「海洋に関する基本的な計画の策定その他海洋に関する施策の基本となる事項を定める 」に当たる「海洋基本計画」について述べられます。海洋基本計画では「海洋に関する施策についての基本的な方針」、「海洋に関する施策に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」、「海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」を定め、 5 年毎に見直すことになっています。

 第三章では 12 項目の基本施策について述べられています。本講座に関係するものを太線で示します。 

  1. 海洋資源の開発及び利用の推進
  2. 海洋環境の保全等
  3. 排他的経済水域等の開発等の推進
  4. 海上輸送の確保
  5. 海洋の安全の確保
  6. 海洋調査の推進
  7. 海洋科学技術に関する研究開発の推進等
  8. 海洋産業の振興及び国際競争力の強化
  9. 沿岸域の総合的管理
  10. 離島の保全等
  11. 国際的な連携の確保及び国際協力の推進
  12. 海洋に関する国民の理解の増進等

  推進体制ですが、第一章で「総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し」とあるように 内閣に総合海洋政策本部を置き、その 本部長は内閣総理大臣が務めることになっています(第四章)。総合海洋政策本部の事務は内閣府が行い、必要な事項は、政令で定めるとあります。これで国連海洋法条約を基礎とするわが国の海洋政策のベースができあがりました。

第 1 期海洋基本計画(2008 年)

 この「海洋基本法」を受けて、2008 年に「第 1 期海洋基本計画」が策定されます。内閣総理大臣は自由民主党の福田康夫です。ただし、この計画の中では海洋エネルギーへの関心はまだそれほど高くありません。「エネルギー・鉱物資源の開発の推進」という項目の中にで、メタンハイドレート海底熱水鉱床コバルトリッチクラストについて言及されていますが、「必要な調査・技術開発」を行うと書かれているだけですし、洋上風力発電については、「設置コストの低減、耐久性の向上のための技術的課題とともに、環境への影響を評価する手法の確立等に取り組む」、波力、潮汐等による発電についても、「国際的な動向把握基礎的な研究を進める」とある程度で、具体的な記述の欠けます。石油が高騰し、京都議定書の第 1 約束期間中なのですが、国の意思は原子力の増設の方向を向いていた時期でした。

 ところが、民主党への政権交代があった後、2011 年には東関東大震災とそれに続いて福島原発事故が起こります。そして原発が順々に停止し電力が不足。ついに 2012 年 5 月には原発は完全にゼロとなる事態に直面することになります。原子力が否定され、「国の意思」は再生可能エネルギーを向きます。そして、2012 年 8 月再生可能エネルギーの固定価格買取制度導入されます。ここから、海洋エネルギーにも光があたり始めます

海洋再生可能エネルギー利用促進に関する取組方針(2012)

 原発が完全にゼロとなった 2012 年 5 月に民主党内閣(野田政権)の総合海洋政策本部において、「海洋再生可能エネルギー利用促進に関する今後の取組方針」が取り決められます。下記がその最初の部分です。

 四方を海に囲まれた我が国においては、再生可能エネルギーのうち、洋上風力、波力、潮流、海流、海洋温度差等、海域において利用可能な再生可能エネルギー(以下「海洋再生可能エネルギー」という。)の賦存量がかなり大きく、発電に利用する場合には陸上以上のポテンシャルがあると言われている。このため、海洋再生可能エネルギーを利用した発電技術を早期に実用化し、我が国におけるエネルギー供給元の一つとして活用していける環境を整備することは、我が国のエネルギー政策上重要な課題であり、温室効果ガスの排出削減による持続可能な低炭素社会の構築の観点からも、政府一丸となって取り組んでいく必要がある。

内閣府 総合海洋政策本部  「海洋再生可能エネルギー利用促進に関する取組方針」(2012)

 この方針で特に力を入れているのは、実証フィールドの整備です。EMEC のような海洋エネルギーの実証サイトをわが国でも整備しようというのです。その場所については、「場所の選定方法は公募形式とし、地方公共団体が申請を行うことを基本とする。」となっています。 つまり地方公共団体が関係者と調整して手を上げ、海洋政策推進事務局で選定するというプロセスです。その結果、表 5-6 の 6 県 8 海域が実証フィールドに選定されました。対象エネルギーとしては、浮体式洋上風力、波力、海流、潮流、海洋温度差発電となっています。

表5-6 海洋再生可能エネルギーの実証フィールド(出典:内閣府総合海洋政策推進事務局)

第 2 期海洋基本計画(2013年)

 2012 年の 12 月に政権が民主党から自民党に交代し、第 2 次安倍内閣が発足します。そして、その翌年の 4 月に「第 2 期海洋基本計画」が閣議決定されます。前述のようにこの時期日本は、原油高、原発停止に伴うエネルギー不足に加えて、尖閣問題、そしてそれに端を発するレアアースの供給不安定化などさまざまな問題に直面していました。海洋エネルギー・資源の開発にも力が入っています。「本計画において重点的に推進すべき取組」の項の一番最初に「海洋産業の振興と創出」が入ります。以下がその最初の部分です。

 日本経済を再生し、我が国の成長による富の創出を図ることは喫緊の政策課題である。こうした中、海洋には資源を含めて無限の潜在力があり、またこれまでの取組等を通じ海洋資源の開発等が現実的になりつつあることから、今後、海洋の開発・利用を進め、海洋分野のイノベーションを推進するとともに、海洋産業の振興と創出を図ることは、我が国の成長戦略の鍵となり得るものと期待される。こうした観点から、海洋エネルギー・鉱物資源の開発及び海洋再生可能エネルギーの利用促進を図るべく、これまでの進ちょく状況を踏まえ、産業化や海外における各種のプロジェクトへの参画を念頭に官民を挙げた開発体制の整備等に取り組む。

「海洋基本計画 平成25年4月」より  2.本計画において重点的に推進すべき取組 (1)海洋産業の振興と創出 の冒頭

 開発の内容が、「第2部 海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 1.海洋資源の開発及び利用の推進」のところに具体的に書かれています。「海洋エネルギー・鉱物資源」に関する部分を下記に示します。本講座で扱うほぼすべてのテーマが書かれています。

(1)海洋エネルギー・鉱物資源の開発

  • 石油・天然ガス:基礎物理探査・試錐
  • メタンハイドレート:平成30年度を目処に商業化実現技術の整備、日本海広域分布調査等
  • 海底熱水鉱床:資源量調査・実海域実験を含めた採鉱・選鉱技術開発等
  • コバルトリッチクラスト及びマンガン団塊、レアアース
  • 共通基盤の整備、研究開発

2)海洋再生可能エネルギーの利用促進

  • 洋上風力発電:実証研究の実施、浮体について安全ガイドライン策定、ISO化等
  • 海洋エネルギー(波力・潮流・海流・海洋温度差等):40円/kWhの達成を目標とする実機開発、技術開発
  • 実用化・事業化の促進:地域ごとに調整、海域利用ルール
  • 技術開発・研究開発:実証フィールド整備、第3者評価枠組み
  • 海洋再生可能エネルギー普及のための基盤・環境整備

 洋上風力は一歩先んじていて実証研究段階、その他の海洋エネルギーは実機・技術開発段階ですが、40円 / kWh というコスト目標が掲げられています。そして、この計画を受けて、さまざまな技術開発・実証試験が行われます。その具体的な内容については、つぎの 6 章からの各論で説明したいと思います。もう一点、洋上風力等を実用化するためには、海域利用ルールを整備する必要が出てきます。

港湾法の改正(2016・2019年)

 海洋再生可能エネルギーでは、エネルギーを得るために海域に「装置」を設置するわけですが、自由に設置できるわけではありません。その場所を占有する「許可」を得た後、定められたルールを守る必要があります。海域といってもいろいろあります。港湾は「港湾法」に従って管理され、許認可権者は港湾毎に定められた「港湾管理者」ですし、漁港については「漁港漁場整備法」があり、許認可権者である「漁港管理者」は都道府県知事又は市町村長になります。また、海岸については「海岸法」で、その管理者は 都道府県知事です。これらの特定の法令がある海域を占有する場合には、多少、改正の必要があるかもしれませんが、その法令に従えばいいことになります。ところが、ほとんどの海域は管理する法令のない一般海域です。一般海域については都道府県が規定する条例または規則等に基いて占用の許可を与えていましたが、これは通常 3 ~ 5 年という短期間の許可で、また都道府県によって運用が異なります。そこで統一したルールを新しく作る必要がありました。新しく作るより、すでにある法令を改正する方が楽なので、先ず進められたのが「港湾法の改正」です。

 2016 年には港湾法を改正して、洋上風力などの長期にわたって使用される施設等を設置する場合に、占用の許可を申請できる者を公募により決定するという制度が創設されました。また、さらに導入を促進するために、2019 年港湾法を再改正し、海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)を国土交通大臣が指定し、国の直轄工事により整備した直轄岸壁を、国が海洋再生可能エネルギー発電事業者に対して直接貸し付け、基地港湾における複数の事業者の利用調整を国が新たに行う制度が追加され、占有期間も 20 年から 30 年に延長されました。この時基地港湾に指定されたのは秋田港・能代港・鹿島港・北九州港の 4 つです(図 5-10)。

図5-10 基地港湾(出典:国土交通省港湾局 海洋・環境課「2050年カーボンニュートラル実現のための基地港湾のあり方に関する検討会について」(2021)

第 3 期海洋基本計画(2018年)

 さて、2018 年には第三期海洋基本計画が発表されます。第二期と同じトーンで書かれていますが、「海洋の産業利用の促進」は「海洋の安全保障」の後に置かれており、第二期ほどは力が入っていないように思います。 「海洋の産業利用の促進」 の主な内容はつぎの通りです。

  • 経済安全保障の確保、経済成長の実現、海洋権益の確保を意義として一体的に推進
  • メタンハイドレート海底熱水鉱床レアアース泥等の海洋由来のエネルギー・資源の開発推
  • 洋上風力発電に関し、発電コストの低減海域利用ルール等の制度整備を加速
  • 波力・潮流・海流等の海洋エネルギーに関し、実証研究に取り組みつつ、離島振興策と連携
  • 高付加価値化・生産性の向上を通じて、海洋産業の国際競争力競争力を強化
  • SIP「次世代海洋資源調査技術」の成果を活用
  • 「海洋資源開発技術プラットフォーム」を通じ、企業間交流の活動を支援

 海域利用ルールに関しては一般海域の占用に向けたルールを規定した「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域利用の促進に関する法律案」を国会に提出済みであることが記載されています。

再エネ海域利用法(洋上新法)(2019年)

 再エネ海域利用法(正式名「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域利用の促進に関する法律」、別名「洋上新法」ともいう)が 2019 年に施行されました。その概要を紹介します。

  • 目的:海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用を促進するため、基本方針の策定海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域の指定海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域内の海域の占用等に係る計画の認定制度の創設等の措置を講ずることにより、我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。⇒ 施行令では海洋再生可能エネルギーは「風力」と規定されています
  • 対象海域は、港湾区域(港湾法)、漁港区域(漁港漁場整備法)、海岸保全区域(海岸法)、公園区域(自然公園法)等の法に基づく指定区域以外で、12 海里の領海までの海域。⇒ つまり一般海域です
  • 基本方針:政府は、基本理念にのっとり、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための「基本方針」を定めなければならないとあります。⇒ 2019 年 5 月 17 日に「基本方針」が閣議決定されました
  • 制度の仕組み:つぎの通りです(図 5-11)。
  1. 政府は、関係自治体や漁業団体などの利害関係者などから構成される「協議会」を設置し、海洋再エネ発電事業の実施に関して必要な内容について協議をおこなう
  2. 政府は、関係省庁との協議や関係都道府県知事、協議会などからの意見聴取を経た上で、「促進区域」を指定し、「公募占用指針」を策定する
  3. 政府は、公募占用指針に基づいて公募をおこない、長期的・安定的・効率的な事業実施の観点からもっとも適切な「公募占用計画(事業実施計画)」を提出した事業者を選定する
  4. 選定された事業者は、「公募占用計画」に基づいて最大 30 年間の占用許可を受けるとともに、この計画に沿って発電事業を実施する
図5-11 再エネ海域利用法手続きの流れ
  • 国は有望区域の中から「促進区域」を指定するわけですが、その条件が法に書かれています。
  1. 海洋再生可能エネルギー発電事業の実施について気象、海象その他の自然的条件が適当であり、海洋再生可能エネルギー発電設備を設置すればその出力の量が相当程度に達すると見込まれること。
  2. 当該区域の規模及び状況からみて、当該区域及びその周辺における航路及び港湾の利用、保全及び管理に支障を及ぼすことなく、海洋再生可能エネルギー発電設備を適切に配置することが可能であると認められること。
  3. 海洋再生可能エネルギー発電設備の設置及び維持管理に必要な人員及び物資の輸送に関し当該区域と当該区域外の港湾と一体的に利用することが可能であると認められること。
  4. 海洋再生可能エネルギー発電設備と電気事業者が維持し、及び運用する電線路との電気的な接続が適切に確保されることが見込まれること。
  5. 海洋再生可能エネルギー発電事業の実施により、漁業に支障を及ぼさないことが見込まれること。

 再エネ海域利用法の施行の現状は図 5-11 の通りで、促進区域に指定されたのは 4 カ所、有望地域がさらに 4 カ所あります。

図5-11 再エネ海域利用法の施行等の状況(出典:経済産業省・国土交通省「再エネ海域利用法の運用状況を踏まえた検討事項」2021年2月17日)

 さて、先に述べたように 2050 年カーボン・ニュートラルを受けた「 エネルギー基本計画素案 」では洋上風力の導入目標を「2030 年までに 1,000 万 kW(10 GW)を目指す」としています。 洋上風力の導入には時間がかかるので、本格導入を 2040 年におき、30~ 40 GW の発電設備容量を目指します。洋上風力の本格導入に向けては、さまざまな課題をこれから解決していく必要があります。これについては、つぎの第 6 章で詳しく見ていくことにしましょう。

(更新:2021/09/11)

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