第7章波力発電 7.6 波力発電の日本の状況

 今回は日本における波力発電の導入状況について述べたいと思います。日本での波力発電開発は長い歴史があります。1980 年頃、日本は波力発電開発のリーダー的な存在でした。ところが、2003 年以降、大規模な開発はなりをひそめてしまいます。日本は 2050 年カーボンニュートラルに舵を切り、現在、洋上風力に本腰を入れています。ウクライナ戦争以降、欧州だけでなく日本もエネルギーの調達に苦慮しています。エネルギー自給率の向上が今後、一層、叫ばれることでしょう。そのような状況を考えると、波力発電を含む海洋エネルギー開発に再度、光があたる日が近いように思います。

 では、日本の波力発電の状況について見ていきましょう。

日本における波力発電開発の歴史

 図 7-6-1 に 2003 年までの日本における波力発電開発の歴史についてまとめました。赤字で示したのは 7.4 波力発電技術のところで紹介した「振動水柱型」のプロジェクトです。当時の世界最先端の技術だったと思います。ところが、マイティホエールの実海域試験が終了した 2003 年以降、日本では波力発電に関する大型プロジェクトが行われなくなります。

図 7-6-1 日本における波力発電開発の歴史(1)

 

2007年以降の状況

 図 7-6-2 は NEDO や環境省の資金で実施されたプロジェクトです。いろいろな方式の波力発電技術について開発が行われておりますが、本格的に導入するという話にはなりませんでした。

図 7-6-2 日本における波力発電開発の歴史(2)

 2017 年の機械式波力発電(三井造船)は米国 OPT 社の PowerBuoy を基本モデルとして、日本近海向けの係留方式および装置サイズを研究開発したもので、定格出力 3.0 kW(装置の発電可能能力)、全長約 13 m、フロート直径 2.7 m、スパー(円柱部)直径 1.0 m、空中重量約 10 トンという仕様です。2017 年に神津島の北側に位置する黒根沖で離岸距離 800m、水深 32 m で実証試験を実施しています。

図7-22 機械式波力発電(三井造船 2017年)
出典:経産省「海洋における再生可能エネルギーの現状(2012)、NEDO「海洋エネルギー技術開発」プロジェクトの概要(2018)

 新しいところでは、東京大学生産技術研究所などが実施している平塚波力発電所があります。詳細は生産研の報告が発表されていますので、そちらをご覧下さい。

(更新 2022/10/28)

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