2022 年も、はや 2 月の第 2 週。あまり書いてこなかったこのブログを再開しようと思いながらどんどん時間が過ぎていきました。
「いま、という瞬間は、面白い。いま、いま、いま、と指でおさえているうちにも、いま、は遠くへ飛び去って、あたらしい『いま』が来ている」
これは太宰治の小説「女生徒」の主人公の呟きですが、まさにその通り、こちらが惰眠を貪っているうちに世の中はどんどん進化していき、新しい「いま」に変わってしまっているのです。
気を取り直してブログ再開といきましょう。さて、今日は洋上風力の入札結果についての話です。これは昨年末のことですのでちょっと話が古くなります。
連載講座の「海ーエネルギーと環境」の第 6 章洋上風力の 6.4 日本の導入状況のところで再エネ海域利用法促進区域について説明しました。5つある促進区域は事業者の選定段階にあるのですが、秋田県能代市・三種町及び男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖、および千葉県銚子市沖の 3 海域について実施された入札の結果が昨年末に明らかになりました。つぎの通りです。
- 秋田県能代市・三種町及び男鹿市沖:事業者 三菱商事・中部電力。価格 13.26 円 / kWh。GE 製12.6 MW× 65 基
- 秋田県由利本荘市沖:事業者 三菱商事・中部電力。価格 11.99 円 / kWh。GE 製 12.6 MW × 65 基
- 千葉県銚子市沖:事業者 三菱商事・中部電力。価格 16.49 円 / kWh。GE 製 12.6 MW × 31 基
驚いたのは三海域とも三菱商事・中部電力がとったことです。価格が競合相手より群を抜いて低かったのです。たとえば由利本荘市沖を見てみると、競争相手の JERA・エクイノールが 17.2 円、レノバ・東北電力が 24.5 円、九州電力・RWE リニューアブルズが 18.44 円、日本風力発電・オーステッドが 22.99 円ですから、11.99 円と他社の半分近くになっているわけです。政府が想定していた上限価格は 29 円 / kWh でしたから、それをはるかに下回っており、洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会の「洋上風力ビジョン」の「着床式の発電コストを、2030~2035 年までに、8~9円 / kWh」にするという目標にぐんと近づきました。
講座の 6.5 日本における洋上風力の課題と解決に向けてでこの29 円 / kWhと高い上限価格について考察しましたが、想定している風車サイズは 3.5 MW と着床式では世界の動向からみるとサイズが小さく時代遅れともいえるものでした。ざっとした計算を行いましたが、サイズを10 MW にするとコストが目標値に近づくのです。今回の入札における三菱商事・中部電力の風車サイズは 12.6 MW で現状で最大のものとなっています。
日本ではじめての商用化洋上風力です。この価格でいけば実用化の可能性がぐんと広がります。今後に期待したいと思います。