脱炭素の進捗度合(日本とドイツの比較)

 1 月 4 日の日本経済新聞デジタル版に「ドイツ再生エネ46%、初めて化石燃料を上回る」という記事がでていました。発電量に占める再生可能エネルギーの比率が 2019 年に初めて化石燃料を逆転したというのです。ドイツのフラウンホーファー研究機構太陽エネルギー研究所(ISE)の報告書によれば、太陽光や風力などの再生エネの発電シェアは 18 年から 5.4 ポイント上昇して46.0 %に達し、石炭などの化石燃料は約 40 %となっています。もう少し詳しい数字は次の通り(企業の自家発を含まない%)。

  • 風力 24.6
  • 太陽光 9.0
  • バイオマス 8.6
  • 水力 3.8
  • 褐炭 19.7
  • 石炭 9.4
  • 天然ガス 10.5
  • 原子力その他 14.4

 いかにもドイツは再エネ先進国で、CO2 排出削減が進んでいるように見えます。一方、日本は 2019 年の COP25 で二度の化石賞を取るなど、脱炭素化が進んでいないと批判されています。確かに遅れていることは事実ですが、日本はそんなにたくさん CO2 を排出しているのでしょうか? 

連載講座「海ーエネルギーと環境」の「2.8 排出抑制のために」で、各国のエネルギー強度と炭素強度を比較した図を載せました。それが図 2.16 です。

図2.16 エネルギー強度と炭素強度
MUSDは百万米ドル

 これは 2018 年のデータですが、ドイツは確かに日本より炭素強度が低いですが、フランスなどとは違って大差はないように見えます。下図は 2015 年から 2019 年までの推移を調べたものですが、 2019 年は少し差が開いた様に見えますが、そんなに変わっているようには見えないです。

 

図 日本とドイツのエネルギー強度の推移

 これについては、市川眞一さんが「老獪なドイツに学ぶべき日本のエネルギー戦略」の中でいろいろ書いておられますが、再エネ先進国であるドイツは一方で依然として石炭火力大国なのです。もともと自国で豊富に産出される褐炭を使うという構造になっていること、そして再生可能エネルギーが増えた分、その調整力としての火力発電の役割が大きくなり、結果として再エネが進んでいる割には CO2 排出量が減らない構造になっていると思われます。日本も、もう少し再エネを増やし、石炭火力を減らせばすぐにドイツに追いつきそうですね。

市川眞一「老獪なドイツに学ぶべき日本のエネルギー戦略」(前編)より

(更新:2021/01/30)

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