今回は温暖化がもたらす影響について列挙していきます。温暖化の影響は多数ありますので、それぞれの詳細については参考文献等を参照ください。
海洋がもたらす気象の変化
海水の温度が高まるとその分、水の蒸発量が増え、水の循環に変化がもたらされます。現在すでに、大気中に含まれる水蒸気の量が増加していることが観測されていますし、陸上の降水分布も世界規模で変化しています。さらに、みなさんも実感されている様に、大雨の増加が観測されています。
図 2-7-1 に 21 世紀末における異常気象の可能性についてまとめています。これまで各地で気温の変化が大きくなったり、高温や熱波が増加したり、極端な高潮が増加したりという現象が見られていますが、温暖化が進むにつれて、その傾向がより激しいものになっていくと予測されています。
出典:環境省 IPCC report communicator 基礎知識編 WG1
https://ondankataisaku.env.go.jp/communicator/download/show/64
そのほか、極端なエルニーニョ現象及びラニーニャ現象がさらに頻繁に起こるようになります。また、1.4 で海洋の循環について説明しましたが、大西洋におけ表層では南から北に向かい、深層では北から南に向かうという循環(これを大西洋子午面循環(AMOC)といいます)が弱まることが予測されています。なお、これらの変化の速度や規模は、温室効果ガスの排出量が低いシナリオにおいてはより小さくなります。
生態系への影響とリスク
すでに 1950 年頃より、多くの海洋生物種について、海洋の温度上昇、海氷の変化、及び海洋表層の酸素減少などの変化によって、生息する地理的範囲や季節行動に変化がみられ、生態系の種の構成、個体数、及びバイオマス生産量が変化している事が観測されています。また、生物種の間の相互作用が変化し、生態系の構造や機能が連鎖的に影響を受けています。
また、沿岸域では、生態系が海洋熱波、酸性化、酸素の喪失、塩水の侵入及び海面水位の上昇などの海洋の温暖化の影響を受けています。すでに、生息地の面積、生物多様性、及び生態系の機能・サービスにおいて、これらの影響が観測されています。
今後、すべての排出シナリオにおいて、つぎのような影響が予測されています。
- 海面から深海の海底にかけての海洋生態系における漁獲量の減少や種の構成の変化が起こる
- これらの影響の速度や規模は熱帯域が最も大きいが、極域でも多様な形で影響がある
- 高排出シナリオにおいては影響が増大する
- 海洋酸性化、酸素の喪失、及び海氷面積の減少、並びに気候以外の人間活動が温暖化によって引き起こされたこれらの生態系への影響を悪化させる可能性がある
- 沿岸生態系の生物多様性、生態系の構造・機能が深刻な影響を受けるリスクは、気温上昇が大きくなるほど大きくなると予測される。予測される生態系の応答としては生物種の生息地や及び多様性の喪失、並びに生態系の機能低下などがある。
- 生物や生態系の調整・適応能力は、低排出シナリオにおいてより高くなる。
- 海草や海藻の藻場などの敏感な生態系においては、地球温暖化が工業化以前の気温より 2 ℃ を超えた場合に、高いリスクが予測されている。
- 暖水性サンゴはすでに高いリスクに曝されており、地球温暖化が 1.5 ℃ に抑えられたとしても非常に高いリスク状態にある。
沿岸域に住む人々への影響とリスク
沿岸域に住む人々は、熱帯低気圧、極端な海面水位の上昇や洪水、海洋熱波、及び海氷の消失といった複数の気候に関連する脅威にさらされています。また、気候変動によって魚類の分布が変化したり、その個体数及び漁獲可能量が減少すると、海洋資源に依存する人々の収入、生計及び食料安全保障に影響を与えます。日本でも 近年 サンマやスルメイカなどの不漁が報じられているところですが、 米ラトガース大学(Rutgers University )によると、東シナ海や日本近海の黒潮では、過去 80 年間に漁業資源が 15 ~ 35 % 減少しているとのことです。
海面水位の上昇は、海洋の温度上昇や酸性化とともに、 沿岸域の低平地に住む人々が受けるリスクを増大させます。 IPCC によれば、 珊瑚礁の島々などでは 特にリスクが高く、RCP 2.6 の低排出シナリオでさえも適応の限界に達する可能性があり、 RCP 8.5 の高排出シナリオになると、デルタ地域や沿岸の都市は、2050 年以降、現状の適応では十分ではない可能性があり、適応能力をはるかに高いレベルまで引き上げる必要があるとのことです。
(更新:2022/10/17)