前章 1.2 太陽からのエネルギー放射と地球のエネルギーバランスでは、地球のエネルギーバランスについて説明し、温室効果についても触れました。ここでは温室効果についてもう少し詳しく検討しましょう。さらに、その原因となる温室効果ガスについても調べます。
温室効果(greenhouse effect)
太陽からの光によって暖められた地球は赤外線を放射しますが、その多くが大気に吸収され、再び地球の表面に戻ってくるのが 温室効果でした。図 2-3-1 で見ると、一番右側にある下向きの放射 95 が温室効果です。このように大気が地球からの熱放射をガードする働きをしていて、ちょうど温室のようになっているので温室効果と呼ぶのです。
温室効果ガス( greenhouse gases 略してGHG )
さて大気を構成するガスがすべて赤外線を吸収するかというと、そういう訳ではありません。実は分子はすべて固有の振動をしていて、その固有の振動数と一致する赤外線しか吸収できないのです。
分子に赤外線が当たると、分子を構成する原子間で伸縮運動が起こります。 赤外線のエネルギー はこの伸縮運動のエネルギーと同じ領域なので、分子は赤外光を吸収して振動します。しかし、双極子モーメントの変化を伴うものしか吸収できません。このため、 大気の主成分である窒素や酸素のような等核2原子分子は双極子モーメントが変化しないので赤外線を吸収しませんが、水蒸気、CO2 、メタンのような異核 2 原子分子や 3 原子以上の気体分子は赤外線を吸収します。これらのガスは大気を温める効果を持つことから温室効果ガス(Greenhouse gases 略して GHG)と呼ばれています。 CO2 は人間の活動に深く関係するため、気候変動に最も影響を与える温室効果ガスになります。
ガスの種類によって温室効果の程度が異なります。CO2 以外のガスの温室効果の能力を、CO2 を基準として表した係数(すなわち、CO2 以外のガスの排出量を CO2 相当の排出量に換算するための係数)として、地球温暖化係数(Global Warming Potential 、GWPと略す)や地球変化気温係数(Global Temperature change Potential、GTPと略す)があります(図 2-3-2)。これらの係数は測定する時間の範囲(図 2-3-2 の 20 年や 100 年)によって値が異なります。それぞれの温室効果ガスの寿命が異なるため、残留期間を考慮に入れると、数値が異なるのです。実用的には 100 年がよく使われています。これまで GWP が広く用いられてきましたが、将来の気温変化との関連性が明確でないとの批判があり、地表面温度の変化に基づいた GTP が提案されたものです。
出典:IPCC第5次評価報告書統合報告書
図 2-3-2 には温室効果ガスの寿命も示されています。大気中の寿命は、メタンと一酸化二窒素については、一時的な濃度増加の影響が小さくなるまでの応答時間を、その他の温室効果ガスについては滞留時間(気体総量/大気中からの除去速度)を示しています。CO2 は、時間スケールの異なる様々な過程で海洋や陸域に取り込まれるため、大気中の寿命を1つの値で表すことができないため書かれていません。
(更新 2022/10/16)