第4章 再生可能エネルギー コラム1 電力システム改革の電力事業のしくみ

 2013年から行われてきた「電力システム改革」の最終段階として 2020 年に「送配電の法的分離」が行われました。これで、以前は地域毎の電力会社が発電~送電~小売りと一貫して実施してきた仕組みが、市場を軸にした競争原理が働くシステムへと完全に変化したのです。ところがその仕組みがどうも複雑で分かりにくいのです。kWh 価値、kW 価値、ΔkW 価値、メリットオーダー、容量市場、需給調整力市場などなどいろいろな始めて耳にする言葉が飛び交っています。この分かりにくい世界を自分なりに整理しておきたい、これがこのコラムの目的です。浅学のために、間違いや十分に咀嚼できていない点も多々あろうかと思います、お気づきの点や、間違いをご指摘いただけると助かります。

電力システム改革 なぜ?

 まず「なぜ電力システム改革を行ってきたのか?」というところから振り返ってみましょう。以下は経済産業省資源エネルギー庁のホームページからの抜粋です。

 現在進められている電力システム改革以前の日本の電気事業は、各地域につきひとつの電力会社が、「発電」「送配電」「小売」という 3 部門を一貫して提供するという、地域独占の形態にありました。また、電気の小売料金について、発電や送電などにかかったコストに応じて金額が決まる「総括原価方式」がとられていたため、設備などに行った投資を回収できることが保証されていました。このしくみは、全国各地に電気をあまねく行き渡らせる環境をつくることに寄与しました。

 その一方、こうしたしくみは、経営の効率化がはたらきにくいという側面もあることから、電力の安定供給を継続しつつ、同時に、電気料金を最大限抑制し、電気利用者の選択肢と企業の事業機会を拡大することを目的とした、「電力システム改革」が行われることとなりました。

「2020年、送配電部門の分社化で電気がさらに変わる」経済産業省資源エネルギー庁 (2017-11-30)(太字:筆者)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/souhaidenbunshaka.html

「電力システム」とは電気を発電し、送・配電し、販売(小売り)するという電気事業全体を構成するシステムを意味する言葉です。以前は各地域ごとに「○○電力」という電力会社があり、発電から小売りまでを独占していて、一貫提供するという仕組みでした。電力システム改革は、これを発電送・配電小売に分離し、自由競争ができる仕組みに変えることによって、「電気料金の抑制」、「電気利用者の選択肢増大」、「企業の事業機会拡大」を可能にしようというものです。これまで、世界に比べて電気料金が高い、電力会社が選べない、再生可能エネルギーが普及しないなどの問題があったところに、2011 年東関東大震災が起こり、福島第 1 原子力発電所を始め、多数の太平洋岸の大型火力発電所が停止したため、東京電力管内では絶対的な供給力不足に陥り、さらに関東への十分な送電もできず、計画停電や電気の使用制限に至る事態となりました。これを契機として、電力システムを改革しようという動きが一気に加速したのです。

電力システム改革の概要

図コラム4-1 電力システム改革の工程 出典:経済産業省「電力システム改革の概要」平成26年10月

 電力システム改革は図コラム 4 – 1 にある様に、 3 段階で進められました。第 1 段階は 2015 年 4 月 1 日に行われた「電力広域的運営推進機関の設立」、第 2 段階は 2016 年 4 月 1 日に実施された「小売の全面自由化」、そして最後の第 3 段階が 2020 年 4 月 1 日の「送配電部門の法的分離」です。

 最初の「電力広域的運営推進機関の設立」は.それまで各地域内で需給管理を行うのが原則で、需給がひっ迫した時に行う他地域からの電力融通などの広域的系統運用はあくまでも事業者の自発性に委ねられていたものを、広域的な系統運用を拡大して発電所を全国レベルで活用する仕組みとして、「電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)」(OCCTO)を創設したものです。広域機関は以下の 4 つの業務を中心に広域連系全般にかかわる幅広い仕事を受け持っている組織です。

  • 需給計画・系統計画を取りまとめ、周波数変換設備、地域間連系線等の送電インフラの増強や区域(エリア)を越えた全国大での系統運用等を図る。
  • 平常時において、各区域(エリア) の送配電事業者による需給バランス・周波数調整に関し、広域的な運用の調整を行う。
  • 災害等による需給ひっ迫時において、電源の焚き増しや電力融通を指示することで、需給調整を行う。
  • 中立的に新規電源の接続の受付や系統情報の公開に係る業務を行う。

 電力システム改革の第 2 段階は、私たちになじみの深い「小売の自由化」です。それまでは、地域の電力会社からしか電力を買えなかったのですが、この電力小売全面自由化によって、電力の小売部門に新たに事業者が自由に参入できるうになりました(なお発電部門は原則参入自由でした)。この小売自由化によって、いろいろな新電力が参入してさまざまな料金プランを提案し、私たちは電力会社を選べるようになりました。従来の、かかったお金を電気料金に反映できる「総括原価方式」は改められ、自由競争となったのです。

 そして、電力システム改革の最後の段階が 2020 年の「送配電部門の法的分離」です。これは地域の電力会社の送配電部門を別会社にするものです。参入者が増えるなか、送配電ネットワークの使用に関して中立性・公平性を確保するのが狙いです。

電力システム改革後の仕組み

 では、電力システム改革後の仕組みがどうなっているのか見ていきましょう。図コラム 4-2 に電力システム改革後の仕組みを図示しました。事業者や市場などの情報を書き込んでいくとかなり複雑な図になってしまいました。それぞれの項目に番号をつけてあります。順に説明していきましょう。

図コラム 4-2 に電力システム改革後の仕組み

3 つに分離された事業者

 従来は地域の電力会社の垂直一貫体制(一般電気事業者)だったものが、電力システム改革後は「発電①」・「送配電③」・「小売②」の 3 つの事業者に分離されました。それぞれの役割を下記に示します。

  • 発電事業者①:出力 1 万 kW 以上の発電設備を持ち、発電をしてその電力を販売している事業者です。地域の電力会社の発電部門や独立系発電事業者 (IPP、Independent Power Producer)などが該当します。発電事業者は届出が必要で、供給計画の提出などが義務づけられます。
  • 小売電気事業者②:一般の需要に応じて電気を供給する事業を行うもので、経済産業大臣の登録を受ける必要があります。 地域電力 10 社以外の新規参入事業者を指して「新電力」と呼びます。
  • 送配電事業者③: 発電所で発生した電気を、需要家が電気を使用する地点まで、送電線、配電線などで送り届ける事業を行うもので、2020 年 4 月から発電会社から法的に分離されて別法人となったものです。一般送配電事業者は経済産業大臣から許可が必要です。

電気量(kWh)の取引

 私たちユーザーは②の小売電気事業者と契約を結び、電気を得る対価として「電気料金」を支払います。小売電気事業者は①の発電事業者から電気を調達してくるわけですが、これには図コラム 4-2に示す様に 4 つの方法があります。

 第 1 は自分のところに発電設備があり、ここで発生した電気を販売するという ケース a) です。第 2 は小売電気事業者が発電事業者と会社間で1対1で取り決めた料金での売買契約である「相対契約」を結ぶケース b) です。第 3 はケース c) の常時バックアップで、これは、電力小売自由化における経過措置として、新電力が需要家に電力を供給する際に地域の電力会社から一部を継続的に電力を購入できる仕組みです。経過措置ですので、いずれは廃止になる見込みです。そして最後は d,e) の市場取引で、日本で唯一の卸電力市場である「日本卸電力取引所(JEPX)」④に参加して、電力を調達してくるケースです。

 JEPX がどの程度使われているかですが、電力・ガス取引監視等委員会の「電力市場における競争状況」(2021 年 1 月)によれば、取引量は年々増加していて、わが国の電力需要に占めるシェアは 2020 年 8 月末で 41 % に達しています。開設されている市場には、スポット、時間前、先渡、ベースロードがありますが、さきほどの41 % のうちの 40 % がスポット市場で行われています。JEPX の取引量は 2018 年 4 月には 17.1 % でしたが、2019 年 4 月には 30.1 % に急増します。これには、2018 年10 月から、連系線利用ルールが「先着優先」から、市場原理に基づきスポット市場を介して行う「間接オークション」へ変更されたことが影響しています。また、市場活性化の目的で開始された大手電力会社が社内取引の一部を市場経由で行うグロス・ビディングが相当量含まれています。例えば令和 2 年4月 ~ 令和 2 年 6 月における事業者別の買い約定量約定とは売買が成立することをいいます)は、旧一般電気事業者(地域の電力会社)が 507 億 kWh、新電力その他の事業者が 279 億 kWh ですので、スポット市場の買い約定量の大部分(65 %)がグロス・ビディングによるものなのです。

 つぎに新電力がどのように電力を調達しているか見てみましょう。まず総需要に占める新電力のシェアがどのくらいあるかというと、同じ資料によれば、 2020 年 8 月時点での販売電力量ベースのシェアは約 19.7 % と約 2 割になっています。この新電力の JEPX 買い約定量 (スポット、時間前、先渡、BL市場の買い約定量合計)の販売電力量に対する比率は、2020 年 8 月時点では 90.2 % と非常に高いのですが、ここにも自社売買取引が含まれているので、これを相殺した実質買越し量を見ると 47.0 % と半分くらいになります。つぎに常時バックアップによる調達ですが、過去には 25 % を越える時期もあったのですが、現在では 0.5 % くらいまで低下しています。相対取引はというと、電力・ガス取引監視等委員会の別資料によれば、2018 年 6 月時点で 3.16 %で、この値は卸電力市場での価格高騰もあって次第に増加しているとのことです。まとめますと、新電力は半分くらいを自社調達し、残りを主に市場から調達していることになります。

 このようにして電気量が取引されてますが、電気量の単位はキロワットアワー(kWh)ですので、卸電力市場では電気のキロワットアワー価値(kWh価値)が取引されていることになります。

卸電力市場でのオークションの仕組み

 では、卸電力市場ではどのような取引がなされているのでしょうか? ここでは、卸電力市場において行われている入札(オークション)の仕組みについて見ていきます。

 市場では発電事業者が売り入札、小売事業者が買い入札を行い、図コラム 4-3 の様に需給がバランスする点でその約定価格(円 / kWh)と約定量(kWh / h)が決定されます。JEPX のスポット市場では 30 分ごとに約定価格と量が決定されていて、約定方式はブラインド・シングルプライスオークション方式をとっています。シングルプライスオークションとは、入札価格によらず約定価格で取引されるもので、例えば、10円 / kWh で売りの入札を出していても、約定価格が 15 円 / kWhであれば、15 円 / kWh で売られることになります。また、ブラインドとは、入札時に他の参加者の入札状況が見えないことを指しています。

図コラム 4-3 市場での約定のメカニズム

 では、発電事業者側はどのような額を入札すればよいのでしょうか? 経済学によれば完全競争市場では売り手の利潤が最大となるのは「市場価格」=「限界費用」の時なので、限界費用で入札すればよいことになります。限界費用Marginal Cost、MC と略す)とは費用関数を生産量で微分したもの、すなわち、生産物を 1 単位変化させたとき、費用がどれだけ変化するのかというものですから、発電の場合には燃料費に相当します。下図はある電力会社が持つ発電設備を燃料費(限界費用)の安いものから順に並べたものです。このように発電コストの安い順に並べたものをメリットオーダーと呼びます(図コラム 4-4)。このメリットオーダーで、需要量を満たす発電設備のうちで最もコストの高いものの燃料費(限界費用)がこの電力会社の「限界費用」になります。ですから、この金額での入札が一番、経済合理的になります。もし、自分のところの限界費用が市場価格より高い場合には、市場価格より高い電源を停止して、市場から電力を調達してくる方が発電コストは最小になりますし、逆に自分の限界コストの方がが低い場合には需要量までフル生産すれば利益が最大となります。

図コラム 4-4 メリットオーダー

 スポット市場において参加者が限界費用で入札するとすれば、供給曲線はその地域における全発電設備を限界費用のメリットオーダーで並べたものとなり(図コラム 4-5)、これが需要曲線と交わるところが約定価格・約定量になります。ではメリットオーダーはどんな電源順になっているでしょうか? 図のように、いちばん限界費用が安いのは初期コストはかかるが燃料費がかからない再生可能エネルギーです。次いで原子力、石炭火力、LNG 火力となり、最後に石油火力が来ます。シングルプライス方式ですから、約定価格以下の入札はすべて約定価格で取引されることになるので利益が生まれ、これを固定費の回収に回すことができます。これが卸電力市場の仕組みです。

図コラム 4-5 卸電力市場におけるメリットオーダー

容量市場の創設

 再生可能エネルギーの導入促進策が講じられ、その結果、再生可能エネルギーのシェアは年々増加し続けています。再生可能エネルギーの場合、燃料費はゼロなので、これが増えると約定価格がどんどん低下していきます。すると限界費用の高い化石燃料発電プラントは競争力を失います。電力の価格が低下するので消費者としては嬉しい限りですが、ここで困ったことが持ち上がります。増加するのは主に風力・太陽光といった変動性再生可能エネルギー VREです。電力では需要と供給を常に一致させる必要があるので、この変動をなんらかの方法で吸収しなければなりません。つまり調整力が必要なのです。そして、調整力としては現状では主に火力発電が用いられています。限界費用の高い火力発電所が廃止に追い込まれると、調整したいと思っても使える電力(予備力)がないという事態が起こるのです。このように市場原理だけでは供給力を十分確保できないと考え、供給力を確保するための別な仕組みを追加しようと始められたのが「容量メカニズム」という仕組みです。容量メカニズムとは、電気の供給力 (kW) を維持していることを経済的な価値キロワット価値 kW価値と定義して、発電量 (kWh) とは無関係に対価を支払おうという仕組みです。容量メカニズムとしてはいろいろなものがありますが、ここでは 2020 年に日本で導入された「容量市場」に絞って説明しましょう。

 「容量市場⑤」とは電力の供給力を確保するために設けられた市場です(図コラム 4-2)。ここでは電力設備の容量、すなわち kW 価値 の取引を行います。それも 4 年後の供給力を取引するのです。卸電力市場では、電気量の売り手と買い手が参加して入札を行い、「需要」と「供給」が一致するところで取引が行われました。ところが、容量市場にはこの「需要」が存在しません。消費者から見れば電気の使用は価値がありますが、供給力には価値を感じないからです。そこで政府や規制機関が小売り業者に容量の購入を義務づけることで需要を作り出しています。日本の場合は広域機関需要曲線を公表しオークションを開催します。これを受けて、図コラム 4-2 のように発電事業者①が 4 年後に提供を予定する発電所などの供給力(kW)と応札価格(円/kW)を応札 f)します。そして、広域機関が応札価格の安価な順に並べて、供給力(kW)と需要曲線の交点で約定をおこなうのです。オークションは卸電力スポット市場と同じシングルプライス方式ですから、落札された分の取引は応札金額にかかわらず、すべて約定価格で行われることになります。電源を落札した事業者には 4 年後の供給力の維持、発電余力の市場応札、電気の供給指示への対応などの要求が課せられ、要求事項が達成されたかをアセスメントした後、約定価格 (円 / kW) × 容量確保契約容量 (kW) からなる容量確保契約金額 g) が広域機関から支払われます。このとき要求事項が達成されていない場合にはペナルティー分が減額されます。また、費用負担する小売電気事業者の事業環境の激変緩和の観点から、2030年までは落札した発電所などへの支払額を一定の率で減額する経過措置が設けられています。一方、発電事業者へ支払う容量確保契約金額の原資として小売電気事業者②から容量拠出金 h) が集められ、私たちが支払う電気料金の中に含められることになるわけです。容量市場については始まったばかりですから、これから、仕組み上の不備がいろいろ発見され、修正される可能性があると思われます。

一般送配電事業者の役割

 さて、電気の権利は発電事業者 → 小売電気事業者 → ユーザーと流れていきますが、物理的に電気は発電事業者の持つ発電所から私たちユーザーのもとへ送電線配電線を通って流れていきます(図コラム 4-2)。この送配電線は一般送配電事業者③が所有しています。そこで小売事業者は一般送配電事業者に電気の送配電を委託します。これが「託送契約」です。そして、このとき小売電気事業者に課せられるのが i)託送料金です。一方、小売電気事業者だけが送配電費用を負担するのは不平等ということで、2023 年から発電事業者にも 発電側基本料金 j)が課せられることになりました。

 電気は「生もの」で保存が効かないので、「需要」と「供給」を一致させる必要があることはすでに述べました。それも一致させるタイミングが「瞬時」であるというところが電気のやっかいなところです。ですから、需要と供給が常に同時バランスするように「系統運用」していく必要があります。日本ではこの「系統運用者」の役割を一般送配電事業者が担っています。発電事業者と小売電気事業者は 30 分単位で翌日の発電計画や需要計画を系統運用者に提出します。これを元に一般送配電事業者は、電力ネットワークに流れる潮流(power flow)が運用容量を越えない様にしながら、発電と需要のバランスを維持させていくのですが、実績と計画の間にはズレ(インバランスという)が生じます。周波数維持の観点からは瞬時に需給バランスさせなければなりません。このズレの補正を一般送配電事業者が行います。この時、使われるのが 4.3 で出てきた「調整力」です。この調整力を以前は一般送配電事業者が公募によって調達していたのですが、2021 年 4 月にエリアを越えた広域的な調整力の調達を行う需給調整市場が創設され、市場調達する仕組みが加わりました。なお、インバランス分については、発電事業者や小売電気事業者は市場価格をベースに算定された「インバランス料金」を支払うことになります。このように需給調整市場は瞬時の需要と供給のズレ(ΔkW)を埋める調整力(これをΔkW価値という)を取引する市場なのです。

再生可能エネルギーの取引

 では、電力システム改革後に「再生可能エネルギー」がどのように取引されるかについて調べてみましょう。実は、かなりややこしい事になっています。

 再生可能エネルギーには 4.5 で述べたように FIT が適用され、固定価格で電力会社が買い取ります(これをFIT電気という)。この「買取事業者」は以前は「小売電気事業者②」の事でしたが、2016 年に FIT 法が改正され、2017 年 4 月以降は「一般送配電事業者③」となりました(図コラム 4-2のk)。買い取られた FIT 電気はどうなるかというと、原則として卸電力取引市場 (JEPX)④を通じた取引により小売電気事業者②に供給(l)されますが、相対取引(m)も可能です。但し、FIT 電気は火力発電所で作られた電気と同じ扱いになって、再生可能エネルギーの 「CO2 が排出されないという特長」は消えてしまいます。つまり、小売電気事業者が FIT 電気を買っても「環境価値のある再生可能エネルギー」を買った事にはならないのです。これは FIT の補助金の原資がそもそも国民が支払った賦課金だからです。すでに環境価値の対価は支払い済みということなのです。そこで FIT 電気の環境価値を別途、証書化して市場で取引しようと JEPX の中に非化石価値取引市場⑧が創られ 2018 年 5 月から取引が開始されました。この FIT 非化石証書証書の売り出し(n)を行うのは費用負担調整機関の低炭素促進機構(GIO)であり、購入(q)するのは小売電気事業者②です。電力の販売量が 5 億 kWh 以上の小売電気事業者には、エネルギー供給高度化法によって「自ら販売する電力の非化石電源比率を 2030 年までに 44 % 以上にする」という目標(2016 年制定)義務づけられています。自らのところで目標達成が困難な場合、市場から証書を購入し不足分を補うことができるようになっており、証書販売で得られる収入は FIT 賦課金の低減に使用される仕組みなっています。また、購入された FIT 非化石証書の由来となった電源種や発電所所在地等の属性情報を明らかにする(トラッキング)ことも可能となったので、国際的再エネ導入拡大を進めるイニシアチブである RE100 に活用することも可能です。

 さて、この非化石価値取引市場⑧では 2020 年 4 月より、FIT 以外の非化石電源(大型水力等)も含め、全非化石電源に由来する非化石価値が証書化され、取引されています。現在、非化石価値証書としては FIT 非化石証書(再エネ指定)非 FIT 非化石証書(再エネ指定、指定無し)の3種類が存在しています。この「非 FIT 非化石証書(再エネ指定)」には大型水力卒 FIT等が該当します。また、「非 FIT 非化石証書(指定なし)」には原子力などが該当します。「卒 FIT」というのは、FIT制度の買取期間が満了した案件をさします。2009年に FIT の前身の余剰電力買取制度の下で開始された住宅用太陽光発電設備からの買取期間は10年でしたので、2019年以降この卒 FIT が発生しています。

 では、FIT以外の再生可能エネルギーの流れはどうなるかというと、再生可能エネルギーの価値が「電力としての価値」と「非化石価値」の 2 つに分離されて市場取引されます。まず、「電力」としては他の電力と同じように卸電力市場④を経て(o)、あるいは相対取引で小売電気事業者②に売り渡されます。一方、「非化石価値」は証書として非化石取引市場⑧を経て(p)、あるいは相対取引で小売電気事業者に売り渡されるのです。卒FITや小規模な発電事業者の場合にはアグリゲーター(特定卸電力事業者)を経由することも可能です。

進化を続ける電力システム

 このように電力システム改革後の仕組みを説明しましたが、この仕組みは現在もなお進化し続けています。2020年の送配電事業者の法的分離を持って一応、電力システム改革は完了するのですが、これはこれまで地域の電力会社の中で垂直統合されていたシステムを分離して、多数の関係者が参加し、かつ市場メカニズムを取り入れた分散システムに移行させるという大きな変革を行っているのです。形としては整っても、すべてが調和しながら動くかが大問題です。いろいろな不都合が発生するたびに、様々な手直しがなされていくものと想像します。

(更新 2021/08/08)

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