第2章海洋と気候変動 2.5 温室効果ガスの排出量

 前回、「人為起源の放射強制力が 1950 年、1980 年、2011 年とどんどん大きくなっていることが示されています」と述べました。人為起源の放射強制力のうちで気候への影響がもっとも 大きいものは温室効果ガスです。今回はその「温室効果ガスの排出量がどのように推移してきたか」について調べます。

温室効果ガスの大気中濃度

 まず、図 2.7 を見てください。この図は大気中の温室効果ガス濃度の推移をに示したものです。線と点は図の注にあるように、それぞれ大気の直接測定氷床コアから得られたものです。最近のデータは直接測定ですが、過去のものの大半は氷床コアのデータです。 では、この氷床コアとは何でしょうか?

 氷床コアとは、南極やグリーンランドの氷をボーリングしてコアサンプルを採り、そこに閉じ込められた大気の成分を調べる手法です。これによって 過去の気温や大気の成分などを推定・復元することができます。

 図 2.7 から、温室効果ガスの濃度が次第に上昇を続けていることが分かります。特に1950年以降に、上昇が著しくなっていますね。CO2 (左軸)と他の温室効果ガス(右軸)とで、濃度の単位が違うのに注意して下さい。CO2 の濃度はこの図ではまだ 400 ppm に達していませんが、最近の報告(WMO 2019 年の値)では 410.5 ppm に達しています。前回述べた放射強制力の増加はまさにこの温室効果ガス濃度の増加に起因するものです。

図2.7 温室効果ガス濃度の推移
出典: IPCC第5次評価報告書統合報告書日本政府翻訳を編集

世界全体の温室効果ガスの排出量

 それでは、つぎに温室効果ガスの排出量の推移を見てみましょう。図 2.8 は 1970 ~ 2010 年における人為起源の温室効果ガスの年間排出量をガス種別に CO2 換算で示したものです。人為起源の温室効果ガスの排出量は 1970 ~ 2010 年にわたって増え続け、2010 年には 490 ± 45 億トン CO2 換算/年に達しています。 この温室効果ガスの排出量増加分の 約 78 % が化石燃料を燃焼や工業プロセスで使用する場合に発生する CO2 です。従って、CO2 の排出量をいかに抑制するかが地球温暖化を食い止めるカギとなります。

図2.8 温室効果ガス排出量の推移
出典: IPCC第5次評価報告書統合報告書 日本政府翻訳

  図 2.9 は 1900 年から 2020 年までのエネルギー関連の CO2 排出量の推移を表したグラフです。排出量が減少している時期が 5 箇所あります。古いところから大恐慌、第2次世界大戦、第2次オイルショック、リーマンショック、そしてコロナ禍の現在です。戦争、不況、そして伝染病による経済活動の縮小によって CO2 の排出量が減っているのです。この点については 2.8 で詳しく考察したいと思います。

図2.9 エネルギー関連のCO2の排出量の推移 
出典:IEA https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/global-energy-related-co2-emissions-1900-2020

日本の温室効果ガス排出量

 日本の場合を見てみましょう。 図 2.10 に日本の温室効果ガスの排出量の推移を示します。日本の温室効果ガス排出量は多少でこぼこがありますが13 億トン CO2 換算程度で、2018 年では減少して 12.4 億トン CO2 換算、2019年ではさらに減少して12.1億トンCO2 換算となっています(2019年速報値はここ参照)。図 2.8 と比較するため、2010 年時点の値を調べると、日本の排出量は 13.5 億トン CO2 換算ですから、世界全体の 3 %程度となります。

 この 2018 年の排出量 12.4 億トン CO2 換算の内訳ですが、 その 91.6 % の 11.4 億トンが CO2です。さらに その 93 % の 10.6 億トンがエネルギー起源の CO2 となります。すなわち、温室効果ガスの削減のためにはエネルギー起源の CO2 の排出を抑えることが一番のポイントとなるわけです。温室効果ガスの削減のために何をなすべきかについては、後の 2.8 で考察しましょう。

図 2.10 日本の温室効果ガス排出量の推移
出典:環境省 2018 年度(平成 30 年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/results/material/sokuhou_all_2018.pdf

(更新 2021/01/24)

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