第2章海洋と気候変動 2.5 温室効果ガスの排出量

 2-2 で人間の影響(すなわち温室効果ガスの増加)が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたこと、2-3 で「温室効果ガス」のなかで特に CO2 とメタンの影響が大きいことを述べました。今回はその「温室効果ガス」の排出量がどのように推移してきたかについて調べます。

温室効果ガスの大気中濃度

 まず、図 2-5-1 を見てください。この図は大気中の温室効果ガス濃度の推移をに示したものです。線と点は図の注にあるように、それぞれ大気の直接測定氷床コアから得られたものです。最近のデータは直接測定ですが、過去のものの大半は氷床コアのデータです。 では、この氷床コアとは何でしょうか?

 氷床コアとは、南極やグリーンランドの氷をボーリングしてコアサンプルを採り、そこに閉じ込められた大気の成分を調べる手法です。これによって 過去の気温や大気の成分などを推定・復元することができます。

 図 2-5-1 から、温室効果ガスの濃度が次第に上昇を続けていることが分かります。特に 1950 年以降に、上昇が著しくなっていますね。CO2 (左軸)と他の温室効果ガス(右軸)とで、濃度の単位が違うのに注意して下さい。CO2 の濃度はこの図ではまだ 400 ppm に達していませんが、2020 年には 413.2 ppm に達しています

図 2-5-1 温室効果ガス濃度の推移
出典: IPCC第5次評価報告書統合報告書日本政府翻訳を編集

世界全体の温室効果ガスの排出量

 それでは、つぎに温室効果ガスの排出量の推移を見てみましょう。図 2-5-2 は 1990 ~ 2019 年における人為起源の温室効果ガスの年間排出量をガス種別に CO2 換算で示したものです(tCO2-eq と表記しています)。人為起源の温室効果ガスの排出量は 1990 ~ 2019 年にわたって増え続け、2019 年には 59 GtCO2-eq / 年に達しています。 Gt (ギガトン)は 10 億トンのことです。この温室効果ガスの 約 64 % が化石燃料を燃焼や工業プロセスで使用する場合に発生する CO2 (青色)です。従って、CO2 の排出量をいかに抑制するかが地球温暖化を食い止めるカギとなります。

図 2-5-2 温室効果ガス排出量の推移
出典: IPCC第6次評価報告書WGIII報告書 SPM

  図 2-5-3 は 1900 年から 2020 年までのエネルギー関連の CO2 排出量の推移を表したグラフです。排出量が減少している時期が 5 箇所あります。古いところから大恐慌、第 2 次世界大戦、第 2 次オイルショック、リーマンショック、そしてコロナ禍の現在です。戦争、不況、そして伝染病による経済活動の縮小によって CO2 の排出量が減っているのです。この点については 2.8 で詳しく考察したいと思います。

図 2-5-3 エネルギー関連のCO2の排出量の推移 
出典:IEA https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/global-energy-related-co2-emissions-1900-2020

日本の温室効果ガス排出量

 日本の場合を見てみましょう。 図 2-5-4 に日本の温室効果ガスの排出量の推移を示します。日本の温室効果ガス排出量は多少でこぼこがありますが13 億トン CO2 換算程度で、2018 年では減少して 12.4 億トン CO2 換算、2019 年は 12.1 億トン CO2 換算、コロナ禍の 2020 年はなんと 11.5 億トン CO2 換算となっています。図 2-5-2 の世界全体が 2019 年で 590 億トンCO2換算ですから、日本の排出量は世界全体の 2 %程度となります。

 この 2020 年の排出量 11.5 億トン CO2 換算の内訳ですが、 その 90.8 % の 10.4 億トンが CO2です。さらに その 93 % の 9.7 億トンがエネルギー起源の CO2 となります。すなわち、温室効果ガスの削減のためにはエネルギー起源の CO2 の排出を抑えることが一番のポイントとなるわけです。温室効果ガスの削減のために何をなすべきかについては、後の 2.8 で考察しましょう。

図 2-5-4 日本の温室効果ガス排出量の推移
出典:環境省 2020 年度(令和 2 年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について
https://www.env.go.jp/content/900518857.pdf

(更新 2022/10/16)

タイトルとURLをコピーしました