CCSとは
CCSは発電所や製鉄所などの固定排出源から発生するCO2を分離・回収し、貯留層まで輸送し、地下に圧入・貯留することによって大気中へのCO2の排出を抑制する技術である。CCSを構成する要素を図1に示した。
分離・回収プロセス
発生源から発生するCO2を分離・回収するプロセスである。回収時の消費エネルギーおよび回収コストの低減はCCSの大きな課題のひとつであり、このため低エネルギー消費、低コスト型の分離回収技術がさかんに研究開発されている。CO2の濃度を高めるには、空気の代わりに酸素によって燃焼や酸化を行い、CO2濃度を高める酸素燃焼法などの燃焼・酸化プロセスの改善による方法と、発生するCO2を化学吸収、物理吸収、膜分離、深冷分離などの方法によって分離・回収する方法がある。選定すべき技術は、発生ガスのCO2分圧、他の不純物、要求されるCO2の純度等によって異なる。吸収法ではCO2分圧が低い場合には化学吸収法が、分圧が高くなると物理吸収法が有利となることが多い。
輸送プロセス
分離回収したCO2を貯留層まで輸送するプロセスである。パイプライン、タンカー、ローリー輸送が考えられる。輸送手段の標準となっているパイプライン輸送では、回収されたCO2を脱水、昇圧し、パイプラインに送り込む。海外ではCO2が液体状態となる10MPa以上で行われることが多い。北米ではすでに自然源や人為的発生源から生じる3,000万トン以上のCO2が毎年、6,200キロメートルに及ぶ米国とカナダを結ぶパイプラインを通じて輸送されている 。また、欧州でも天然ガスパイプライン網の整備が進んでいるため、CO2輸送手段としてのパイプラインは抵抗が小さい。一方、輸送距離が大きくなるとパイプラインでの輸送コストは増大するため、遠距離の貯留層を利用せざる得ない場合にはタンカー輸送が有利となる。日本においては陸上パイプラインの敷設コストは極めて高いこと、天然ガスの大規模なパイプラインネットワークの経験もないことから、タンカー輸送も有望な選択肢となり得る。タンカー輸送の場合にはCO2を加圧、冷却して液体状態にして輸送を行う。
地中貯留プロセス
CO2地中貯留はCO2を地下の空間に圧入して閉じ込め、貯留する技術である。従って、貯留場所には「CO2を貯留するための空間」、「CO2が逃げ出さないためのシール層」、および「シールのための構造」が必要である。「CO2を貯留するための空間」としては多孔質で浸透性のある岩石が適しており、後述の堆積層があげられる。また、「CO2が逃げ出さないためのシール層」としては低空隙率・浸透率の頁岩や泥岩などがあげられる。「シールのための構造」としては貯留層の上部にシール層(キャップロック)を有する構造が必要であり、ドーム構造(背斜構造)などがあげられる。また、CO2の貯留量を大きくとるためには、CO2が占有する体積を小さくする事が望ましい。このため、CO2を地下で体積が小さい超臨界状態とすることが必要となり、この要件を満たす貯留層の深度は800m以上となる。
このような貯留の条件を満たす場所としては堆積盆地がある。堆積盆地とは泥や砂、火山噴出物が堆積した地層が厚く分布する場所のことであり、貯留層としては図2に示す石油・ガス田、石炭層、および地下深部塩水層(帯水層)があげられる。